カテゴリー: インタビュー

介護業界で活躍する方のインタビューや体験談を掲載しています。介護職を始め、理学療法士やケアマネジャーなどの専門職、デイサービス経営者の仕事内容ややりがいなどをインタビュー。介護業界で働く方々のリアルな声が聞けるページです。

  • 不自由さを楽しむ!訪問美容師の難しさとやりがいとは?

    不自由さを楽しむ!訪問美容師の難しさとやりがいとは?

    高齢や病気で美容院に来られない方のために、居宅や施設などに出張し美容院とほぼ変わらないサービスを提供する訪問美容師。今回は広島県で30年近い訪問理美容の歴史を持つ「ビューティヘルパー」所属の訪問美容師・中川裕子さんにお話を聞きました。「私が寝たきりになったら髪を切りにきてね」というお客様の言葉で訪問理美容の必要性に気付いた中川さん。利用者さんが思わず涙してしまったエピソードは必見です。訪問美容に興味がある方や理美容師資格を活かしたい方はぜひ読んでみてください。

    ※インタビューのため一時的にマスクを外しています。
    ※インタビュー実施日:2022年10月

    [btp_box]中川裕子(なかがわ・ゆうこ)さんプロフィール
    美容・理容の訪問業務「ビューティヘルパー」(広島市佐伯区)の訪問美容師。美容師の経験を活かし、施設や病院、自宅などを訪問し、美容サービスを提供。[/btp_box]

    今回インタビューを行った「ジョイフル・ファミリー観音台」は、広島市佐伯区にある介護付き有料老人ホームです。訪問理美容サービス「ビューティヘルパー」は、同施設を運営するジョイフル・ファミリー株式会社によって運営されています。

    [btp_box]訪問美容師とは?
    病気や高齢などのため、美容院に足を運べない方のために施設や病院、ご自宅などを訪問し、ヘアカットやカラーなどの美容サービスを提供する仕事です。寝たきりの方や、麻痺、拘縮のある方への施術も行われるため、施術技術だけでなく、介護の基礎知識や特別な配慮が必要とされます。[/btp_box]

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    訪問美容師になったきっかけを教えてください

    (中川さん)結婚後、知人から「美容師をやってみない?」と勧められたことがきっかけです。元々は別の仕事をしていて、美容師の仕事に興味があったわけではありませんでした(笑)ですが、やっていくうちに楽しくなってきて、徐々に固定のお客様も増えていきました。

    ある日、常連のお客様から「私が寝たきりになって美容院に行けなくなったときは、家にカットに来てほしい」と頼まれたんです。そのとき初めて「お客様がお年を召していけば、美容院に足を運んでいただけなくなる日もくるのか」と気が付きました。それから「訪問施術ってどうすればできるのだろう?」と考えるようになります。

    訪問施術中の中川さん

    (中川さん)訪問美容をより意識するようになったきっかけは、子どもの入院です。長期入院になると髪も伸びてきて、誰かがカットしなければなりませんよね。訪問美容サービスを導入している病院ではなかったので、看護師さんや家族がカットすることが一般的なようでした。

    美容師としての技術はありますが、病院でカットした経験はもちろんありません。いつもと違う環境で、試行錯誤しながら洗髪やカットしていきました。すると、私の姿を見た看護師さんが「そんな風にやればうまくできるのね」と感心していたんです。私自身も、病院で施術できた手ごたえを感じていました。そんな出来事もあって、訪問美容の道に進むことになります。

    訪問美容師の仕事内容は?

    仕事に向かうときのスタイル

    (中川さん)施設や病院を訪問してカットやパーマ、カラーなどの美容サービスを提供しています。訪問数としては、高齢者施設が6~7割、病院が2割、ご自宅に伺うのは1割くらいですかね。理容師がいれば髭剃りもできるのですが、新型コロナウイルスの感染が拡大してからは休止しています。

    仕事へ向かうときは、シザー(はさみ)、カットクロス、カラー・パーマの薬剤、消毒用品などをケースに入れて運びます。ウォータータンクも必要なので、旅行鞄2つ分くらいの大荷物です(笑)

    お仕事道具

    (中川さん)新型コロナの感染が拡大し始めたころは、訪問施術がまったくできませんでした。広島県の緊急事態宣言が解除され、ようやく行けたときには、利用者さんの髪もとても伸びていて、誰か分からない状態で…。久しぶりに髪を整えられて、皆さん喜んでおられましたね。

    ビューティヘルパーさんが開設されたときの理美容業界はどんな様子でしたか?

    (中川さん)「ビューティヘルパー」が訪問理美容サービスを始めたのは1993年です。開設当初は今のように高齢者施設も多くなかったので、広島県内の施設を飛び回っていたと聞いています。また、当時はまだ訪問理美容サービス自体もほとんどなく、ビューティヘルパーは先駆けだったのではないでしょうか。今は高齢者施設も増えて、決まった地域を回れるようになっていますよ。

    訪問美容師の仕事で、いつも気を付けていることは?

    (中川さん)寝たきりの方の施術は、2人がかりで慎重に行います。一方が背中に空間を作り、安定する位置で支えます。施術者は点滴や医療器材に気を付けながら、カットしなければなりません。シザーが難しいときはバリカンを使うようにしています。一般的な訪問美容では20分程度で施術を済ませますが、寝たきりの方の場合は体勢を保つのが難しいので、なるべく20分以内に終わらせるようにしています。また、高齢者の方は皮膚も弱いため、櫛で髪をとかすときも注意が必要しなければなりません。

    雰囲気づくりに関しては、オルゴールの音楽をかけて、リラックスできるようにしています。きれいなランチョンマットの上に施術道具を広げるだけでも、「素敵ね」と言ってくださいますよ。

    訪問美容師のやりがいは?

    (中川さん)一番は感謝されるときですね。コロナが流行してからは、施設や病院でもほとんどのイベントが中止になったようです。気軽に外出できない、イベントもほとんどない状況で、訪問理美容が唯一のイベントになっている施設も少なくありません。利用者さんはもちろん、施設のスタッフさんも楽しみにしてくださっています。

    愛用のシザー(はさみ)

    (中川さん)また訪問美容の日を楽しみにしているご家族の方もいて、「カットしているときにビデオ通話をしてほしい」と頼まれることも!今はコロナがあって難しいですが、訪問理美容の日に合わせてお見舞いに来るご家族の方もいました。20年近く同じ施設に施術へ伺っていると、次第にご家族と仲良くなる施術者もいます。美容師に会うことを楽しみにしてもらえるのも、ありがたいですよね

    印象に残っている出来事はありますか?

    (中川さん)長く闘病されていた60~70代の女性を担当したときです。「久しぶりに調子が良くなったから髪を切ってもらいたい」とリクエストを受けました。約2年ぶりのカットで、涙を流して喜んでいただけたんです。

    シザーで髪を切る音を聞くと、「生きている感覚」がするのかもしれません。事情を聞くと「一度は病気で髪が抜けてしまい、ようやく伸びてきた髪をきれいに整えられてうれしい」とおっしゃっていました。いくつになっても女性にとって「髪は命」ですからね。

    今後の目標を教えてください

    (中川さん)今できていることに満足しないようにしたいです。次々と新しい道具が出てきますから、新しいものをうまく取り入れながら、技術も向上させていきたいですね。最近は理容師が減っているので、男性のカットもうまくなりたいと思っています。

    これから訪問美容師を目指したい方、興味がある方へのメッセージをお願いします

    (中川さん)訪問美容に興味がある方は、ぜひ来てほしいです!美容院にいるように施術できないのが難しい点ですが、工夫してやるのは面白いですよ。利用者さんから感謝されると心が温まりますし、「良いことができた」と大きな充実感が得られます。

    誰もが必ず年を取り、いずれは訪問美容が必要になるときが来るでしょう。今後、訪問美容の需要はもっと増えていくと思います。訪問美容に興味がある方は、まずチャレンジしてみてはどうでしょうか?

    一般的な美容室ではできない貴重な体験ができます。働き方でいえば、基本的には土日休みで、施設の夕飯の時間までには必ず終わるので、夜遅くまで働く必要もありません。また現場から直行直帰なのも魅力です。

    これから訪問美容師が増えれば、利用者さんや地域の高齢者の方も気軽にサービスを利用できますよね。理美容師の資格を既に持っている方なら、ぜひ訪問美容に挑戦してほしいです。

    訪問美容師に求める人材像は?

    (中川さん)病気や障害のある方も多いので、心のこもった対応ができる、人の痛みが分かる方に来てもらいたいです。あとは、前向きで明るい方でしょうか。ビューティヘルパーでは、ベテランが付き添って指導します。技術面で不安があっても繰り返し練習していけば上達するので、大丈夫です。

    中川さんのインタビューを終えて

    「不自由な環境で工夫してやるのが面白い」と語る中川さん。訪問美容ならではの難しさも前向きに捉えて取り組む姿が印象的でした。美容院に行ったあとは、気分も軽やかになりますよね。髪型を整えることは、心を整える役割もあると考えられます。今後、需要が増していく訪問理美容。理美容サービスで、利用者さんの髪と心を整えるお仕事をしてみませんか?

    【美容・理容の訪問業務 ビューティヘルパー広島ステーション】

    所在地広島県広島市佐伯区観音台3丁目5-1
    電話番号0120-05-7808
    公式サイトhttp://beautyhelper-h.com/

  • 誰もが暮らしやすい住環境を提案!福祉住環境コーディネーターのやりがいとは?

    誰もが暮らしやすい住環境を提案!福祉住環境コーディネーターのやりがいとは?

    加齢で身体機能が衰えたり、病気などで身体に障害があったりすると、生活空間にも配慮が求められます。「バリアフリーの家」と聞くと、手すりや段差のない空間を思い浮かべますが、実際は一人ひとりの状況に応じた細やかな環境整備が必要になります。
    [btp_line]「福祉住環境コーディネーター」[/btp_line]は、高齢者や身体に障害を持つ人が暮らしやすい住環境を提案するための資格。今回は、「福祉住環境コーディネーター2級」の資格を持ち、住宅会社に勤務する槇田綾子さんに、仕事のやりがいや魅力を聞きました。老いを迎えたとき、生活環境にはどのような工夫が必要なのでしょうか?介護・医療現場で働く方にも役立つ資格なので、ぜひ読んでみてくださいね。

    ※インタビューのため一時的にマスクを外しています。
    ※インタビュー実施日:2022年9月

    [btp_box]槇田綾子(まきた・あやこ)さんプロフィール
    幼稚園教諭や保育士、老人保健施設の事務職、ホテル経営者などを経て、広島の住宅会社に勤務。建築CAD2級、福祉住環境コーディネーター2級を取得し、各資格の専門的な知識を活かした住環境を提案。[/btp_box]

    [btp_box back=”on”]福祉住環境コーディネーターとは?
    高齢者や身体に障害のある方に対して、暮らしやすい住環境を提案する仕事です。医療・福祉・建築の幅広い知識が求められ、福祉用具のアドバイスをすることもあります。[/btp_box]

    福祉住環境コーディネーターの資格を取得したきっかけを教えてください

    (槇田さん)昔から住宅のカタログを見るのが好きで、建築分野に興味がありました。「福祉住環境コーディネーター」を知ったのは、大学で建築の勉強をしていたときです。母が看護師をしていて、医療・福祉の世界が身近だったことも興味を持つきっかけになっていると思います。職業訓練校に通って建築CAD2級を、その後福祉住環境コーディネーター2級を取得しました。

    これまで幼稚園や老人ホームで働いていた際に、[btp_line]「環境って大事だな」[/btp_line]と思うことがよくありました。きちんと整えられた環境は、子供も高齢者の方も安心して過ごせますよね。段差への配慮といった過ごしやすい環境は、子供にとっても高齢者の方にとっても良いものだと思います。

    福祉住環境コーディネーターとしての仕事内容は?

    お客様への接客風景

    (槇田さん)普段は資料請求されたお客様のお話を伺って、営業スタッフにつなぐ仕事をしています。お店の窓口係なので、スタッフの中では誰よりも多くのお客様に接していると思います。ただ、「福祉住環境コーディネーター」を知っている方はほとんどいらっしゃいませんから、通常業務の中で資格の知識を活かし、提案を行うことが多いですね。

    お客様は、「デザイン性」「収納力」「バリアフリー」の3点を兼ね備えたデザインを希望されることが多いのですが、現実的にみると、全ての要素を完璧に兼ね備えた家づくりは難しいです。手すりを付ければ収納面積は減りますし、家具も置きにくくなります。また手すりを付けるとなると、お金もかかりますしね。

    (槇田さん)「老後生活のことを考えて、手すりをつけたい」と希望されるお客様には、「まだ病気・麻痺がない状態で手すりを付けても、お役に立たない可能性がありますよ」と、はっきりお伝えします。なぜなら、麻痺が身体の左右のどちら側なのか、または握力の程度によっても、必要な手すりの位置や形状は変わるからです。
    たとえば、握力がある場合だと丸い掴めるタイプの手すりでも構いませんが、ALS(筋萎縮性側索硬化症)のように握力が弱くなっていく病気であれば、平たい形の、腕をあずけられるような手すりでないと役立ちません。単純に手すりを付けておけばバリアフリーになるわけではない点が難しいところです。

    福祉士住環境コーディネーターの知識がないと、こういった提案はできないので、勉強しておいてよかったと思いますね。

    福祉住環境コーディネーターの仕事で、いつも気を付けていることは?

    (槇田さん)ご家族が言いづらいことを代弁することです。以前「高齢の母のためにバリアフリーの家にリフォームしたい」と男性のお客様に依頼されたことがありました。かなり本格的なリフォームを希望されており、予算もだいぶ膨らんでいたので、「いずれお母様が亡くなった後のこともふまえて、プランを考え直しませんか」とご提案しました。そのお客様はご結婚もされているので、お母様よりも奥様との生活の方が長く続いていきますよね。奥様にとってはお姑さんになりますから、「亡くなったあとの話」は言い辛いものです。ですが、リフォームは数百万円以上かかることもあります。高額な費用がかかる部分なので、お一人だけの意見で進めてしまうと、後々ご家庭でトラブルになる可能性はゼロではありません。だからこそ、厳しいことであっても、伝えるべきことは伝えるように心がけています。

    福祉住環境コーディネーターのやりがいは?

    (槇田さん)老人保健施設で働いていた頃、劣悪な環境に引きこもっていた高齢者の方がいらっしゃいました。スタッフの皆で何度も訪問して説得し、最終的には施設に入居いただけたことがあります。その方が在宅に移行する前に、息子さんが「親のために家をリフォームしたい」とおっしゃっていたので、リフォームのアドバイスをさせていただきました。後日お話を聞くと、私のアドバイスを実践してくださったようで、とてもうれしく思いましたね。資格の知識が実際に役立った瞬間です。

    今後の目標を教えてください

    (槇田さん)福祉住環境コーディネーターを知っている人はまだまだ少ないので、まずは認知度を上げたいです。幼稚園教諭や建築士のように、福祉住環境コーディネーターが誰もが知る資格になり、「リフォームするときは福祉住環境コーディネーターに相談しよう」と思ってもらえるようにしていきたいですね。

    最近は高齢者の孤立が進んで、それぞれの世代が分断されているように感じます。社会的な影響もあると思いますが、住環境も関係していると考えています。3世代が一緒に暮らせて、「看取りまでできる家」が増えていったら、素敵だと思いませんか?

    どんなに年齢を重ねても、食事や排泄といった最低限のことは自分でやりたいと思う高齢者の方は多いです。[btp_line]最後まで自分らしく生活できる住環境を提案していきたい[/btp_line]と考えています。

    これから福祉住環境コーディネーターを目指したい方、興味がある方へのメッセージをお願いします

    (槇田さん)私のように建築業界で働いている方が資格を取るのもいいですが、私は、[btp_line]介護・医療現場で働いている方にこそ、資格の取得をおすすめしたい[/btp_line]です。福祉住環境コーディネーターの知識があれば、利用者さんが退所される際に「おうちに帰ったら、ここの段差でこうやって訓練しましょう」と具体的な提案ができます。また「リフォームをするなら、このようなデザインでお願いするといいですよ」とアドバイスも可能です。実践で使えると感じるのは2級なので、ぜひ2級の取得を目指して頑張って勉強してほしいですね

    槇田さんのインタビューを終えて

    病気や麻痺など身体の状態に応じて、手すり1つにも細かな配慮が必要だと初めて知った方も多いのではないでしょうか。たとえ施設に入居していても「できれば最期は自宅で迎えたい」と思う方は少なくありません。そんなときに、住まいの環境を適切に整えることが求められます。自宅でも安全で快適な暮らしが続けていけるように、あなたも福祉住環境コーディネーターの勉強を始めてみませんか?

  • 理学療法士さんにインタビュー!訪問リハビリテーションの魅力とは?

    理学療法士さんにインタビュー!訪問リハビリテーションの魅力とは?

    [btp_line]「理学療法士」[/btp_line]は、運動機能が低下した方に寄り添いながら、日常生活が送れるよう支援するリハビリテーションの専門職。病院や介護施設で働くイメージが強い職業ですが、利用者さんの居宅へ出向いてサービスを提供する訪問リハビリテーションという働き方もあります。
    そこで今回は、広島市安佐南区の「訪問看護ステーションかがやき」で働く理学療法士の影山美奈枝さんにインタビューしました。日々どのようなことを感じながら働いているのか興味のある方は、ぜひ参考にしてくださいね。

    ※インタビュー実施日:2022年7月

    プロフィール

    [btp_box]影山美奈枝(かげやま・みなえ)さん
    専門学校卒業後、理学療法士の資格を取得。一般病院での勤務を経て、2018年に「訪問看護ステーションかがやき」入職。[/btp_box]

    訪問看護ステーションで働き始めた影山さん。なぜ、影山さんは理学療法士を目指したのか、訪問リハビリテーションへの転職を決めたのか、詳しくご紹介していきましょう。

    理学療法士とは?

    [btp_box]理学療法士とは、ケガや病気により身体に障害のある方、障害の発生が予測される方に対し、座る・立つ・歩くなどの基本動作能力の回復や維持障害の悪化予防を目的に自立した生活を送れるよう支援するリハビリテーションの専門職です。 [/btp_box]

    理学療法士になったきっかけは?

    (影山さん)高校生のときにバレーボールをしていて、膝のじん帯を損傷し、外来のリハビリに通っていたことがあります。そのとき「理学療法士ってかっこいいな」と憧れたのがきっかけです。リハビリのおかげで膝も回復しましたし、不安な気持ちを支えてもらって、「もう一度スポーツをしたい!」と思えるようになりました。患者さんに希望を持ってもらえる、素敵な仕事だと思いました
    進路を決める際に、当時の高校の先生へ相談したところ「資格をとってみたら」と勧められて、専門学校に進学しました。

    訪問リハビリテーションへと転職したきっかけは?

    (影山さん)資格を取得してすぐは一般病院で勤務していました。しばらくは院内勤務でしたが、人事異動で訪問リハビリテーションを経験する機会がありました。そこで、在宅という環境下でのサービス提供にやりがいを感じ、「訪問リハビリっていいな」と思うようになったんです。
    2018年にライフスタイルの見直しをきっかけに、訪問リハビリテーションを専門にしようと決心し、現在の職場へ転職しました。

    訪問リハビリテーションでの理学療法士の仕事内容は?

    (影山さん)今、担当している利用者様は、1日あたり6軒ほどです。利用者様は高齢の方がメインです。寝たきりの方、麻痺のある方、呼吸器疾患のある方、認知症の方…など、利用者様の状況はさまざまです。その方の状況に合わせて、目標に向けたリハビリのプランを組み立て、マンツーマンで指導・アドバイスをしています。

    訪問リハビリテーションならではの注意点は?

    (影山さん)外回りの仕事なので、暑かったり寒かったり…気候の厳しさを感じるところは、訪問リハビリならではですね。コロナ禍ということもあり、利用者様に迷惑をかけないよう、普段から体調管理にはとても気をつけています。
    あと、自動車の運転も注意ですね。とても細い道や急な坂もあるので…。今では少し上達したかなと思います。

    仕事と育児との両立はできますか?

    (影山さん)今、小学1年生(6歳)と保育園児(2歳)の子育て中です。職場には私と同じように小さな子どもを育てながら働いている女性スタッフが多いんです。なので、子育てへの理解があり、お互いにフォローし合いながら働くことができているため、とても働きやすいですよ。
    仕事だけでなく、子育ての悩みも先輩たちに聞いてもらったり、アドバイスをもらえたりするので、すごく心強いですね。頼りになります!

    理学療法士の仕事のやりがいは?

    (影山さん)利用者様一人ひとりの生活に寄り添ったリハビリを提供できることに、やりがいを感じています。生活環境も体の状況も、リハビリの目的も一人ひとり違いますから。
    たとえば利用者様に「買い物に歩いて行けるようになりたい」というご希望があった場合、「目的地はどれくらいの距離にあるのか?」「コンビニなのか大型ショッピングモールなのか?」「杖や押し車は必要か?」「持参するのは手さげバッグ?それともリュック?」…など、人によって考える要素が異なります。時には、目的地までのルートを実際にたどって、道中にどんなリスクがあるのか、どうすれば歩いて行っていただけるか、検証することもあります。
    その結果「一人で歩いて行けるようになった!」と利用者様やご家族様に喜んで頂けるのが、何よりうれしいですね。

    これからの目標や取り組みたいことは?

    (影山さん)将来的には成人だけでなく、小児のリハビリも勉強して視野を広げていきたいと思っています。
    在宅での小児の訪問リハビリを必要としている方はたくさんいらっしゃるのですが、小児リハビリができる理学療法士は少ないのが現実です。
    まだ小児を担当したことはありませんが、我が子が病気だと、保護者の方は本当に不安だと思います。そんなとき、どんな声かけやアドバイスをしたらいいのか…経験がないので勉強しなければと思っています。
    私も2人の子どもがいるので、同じ親としての立場で、寄り添っていけるようになりたいと思います。これから、小児リハビリの勉強会や研修会に積極的に参加し、現場にも出て、そうした方に必要なリハビリを提供できるように、経験を積んでいくことが目標です。

    これから訪問リハビリテーションの理学療法士を目指す方、興味のある方へのメッセージ

    (影山さん)私も最初は「子育てしながら、訪問リハビリできるかな?」と不安がありましたが、職場の訪問看護ステーションには経験豊かな先輩スタッフがいて、なんでも相談できるんです。訪問リハビリは一人で訪問するので悩むことも多いですが、頼りになる先輩たちと働いていると「一人じゃなくてチームだなぁ」と改めて感じます。訪問でのリハビリを少しでもやってみたいと思い立ったら吉日です!「やってみよう」の気持ちを大切に、一緒にチャレンジしていきましょう!

    理学療法士・影山さんのインタビューを終えて

    理学療法士として病院勤務を経て、訪問リハビリテーションへと転職された影山さんのリアルな声はいかがでしたか?利用者様の自宅で提供するサービスだからこそ感じられる「やりがい」を糧に、生き生きと働かれている様子が伝わってきました。在宅で生活する利用者様の背景は、とても多様です。一人で訪問するのは不安も尽きませんが、影山さんのように、多職種と一緒にチームで働ける職場であればとても心強いですよね。理学療法士や訪問リハビリテーションに興味がある方は、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

    【訪問看護ステーションかがやき】

    所在地広島市安佐南区祇園2-47-8
    電話番号082-875-6752
    対応エリア広島市(中区、東区、西区、安佐北区、安佐南区)
    公式サイトhttps://www.lsi-kk.co.jp/

    ★2022年9月1日、広島市南区仁保新町に「訪問看護ステーションかがやき南」オープン!

  • おしゃれな美容サービスを施設でも!訪問美容師さんのやりがいとは?

    おしゃれな美容サービスを施設でも!訪問美容師さんのやりがいとは?

    私たちが普段何気なく行っている美容院ですが、病気や障害、加齢などが原因で気軽に美容院に出かけられない方もいます。そんな方のために、自宅や介護施設などを訪問して施術を行うのが[btp_line]「訪問美容師」[/btp_line]。桑田奈保子さんは広島市を中心に活躍する訪問美容師で、出張理美容サービス「ハーブヘア」の代表です。ただ髪をカットするだけではない、おしゃれな空間づくりにもこだわった独自のスタイルで知られる桑田さんの話を聞きました。

    ※インタビューのため一時的にマスクを外しています。
    ※インタビュー実施日:2022年9月

    [btp_box]桑田奈保子(くわだ・なほこ)さんプロフィール
    「しあわせづくり株式会社」(広島市安佐南区)代表。美容師資格を活かし、2010年から訪問理美容事業「ハーブヘア」をスタート。他にも訪問リラクゼーションサービス「ハーブケア」や、家事代行サービス「ハーブライフ」、訪問介護事業など、幅広い分野でサービスを展開中。[/btp_box]

    桑田さんが代表を務める「ハーブヘア」は、訪問美容師による理美容サービスを主に行っています。広島市全域、東広島市、呉市、山口県東部など広範囲にわたって利用できる訪問理美容サービスです。

    [btp_box]訪問美容師とは?
    障害や病気、加齢など外出が困難な方のために、ご自宅・施設・病院などを訪問し、カット、シャンプー、髭剃りといった施術を行う美容師・理容師のことです。オプションでカラーやネイル、メイク、着付けなどを行っている事業所もあります。[/btp_box]

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    訪問美容師になったきっかけを教えてください

    (桑田さん)高校生の頃、学校交流の一環で特別支援学校を訪問したことがきっかけです。当時の私はおしゃれが大好きで、スカート丈を短くしたり、髪型を整えたりすることに夢中でした(笑)ですが、支援学校に通うほとんどの生徒さんはおかっぱや坊主頭で、大きな衝撃を受けたのです。

    「同じ高校生なのに、どうして皆同じ髪型なんだろう?」と疑問に思っていると「障害があって美容院ではパニックを起こすかもしれないから、家族がカットするしかない」と教えてもらいました。そんな事情を知ったとき[btp_line]「何とかしたい!」「誰もが当たり前におしゃれを楽しめるようにしたい!」[/btp_line]と強く思ったんです。

    学校から帰ってすぐに近所の美容院に駆け込み「無給でいいからアルバイトさせてください!」とお願いに行きました。当時はまだ訪問美容の仕事は知りませんでしたが、その頃から必要性を強く感じていましたね。高校卒業後、美容師免許を取得し、美容院に勤務しました。10年間勤務した後、訪問理美容サービスを立ち上げ、今に至ります。

    訪問美容師の仕事内容は?

    (桑田さん)病院や施設、ご自宅を訪問して、シャンプー、カット、メイクなどをする仕事です。サービスを始めた当初は有料老人ホームでの施術が多く、次第に特別養護老人ホームからも依頼を受けるようになりました。今では、スタッフで手分けして毎月400以上の施設を回っています

    施術道具を運ぶ桑田さん

    (桑田さん)施術道具はキャリーカートに入れて、会場まで運びます。ポータブルシャンプーセットがあるので、場所を問わず、寝たきりの方もシャンプーできるんですよ。カットとブローを入れて、お一人の所要時間は30~40分程度です。午前中に5~6人くらいは施術できますね。施設の規模によって午前中だけで終わることもあれば、昼休憩をまたいで午後も施術にあたることもあります。

    (桑田さん)女性の利用者さんには、カット後にお化粧もさせてもらっています。普段お化粧をしない方が多いので、口紅を塗ったり、頬紅をさしたりするととても喜んでもらえるのはうれしいです。

    寝たきりの方でもシャンプーができるポータブルシャンプーセット

    (桑田さん)利用者さんの中には認知症の方もいらっしゃるので、カットしたことを忘れてしまうときがあります。そこで、毎回施術後にメッセージカードとお写真を渡すようにしています。当日のことを思い出すきっかけになりますし、ご家族にも施術の様子を知ってもらえるのが魅力です。初めてハーブヘアのサービスを受けた方からは「こんな風にカードをもらったのは初めて!」と後日お喜びの手紙をもらったこともありましたね。

    訪問美容師の仕事で、いつも気を付けていることは?

    きれいに飾られた鏡台スペース

    (桑田さん)私たちは普段、好きなときに好きな美容院に行って、おしゃれを楽しみますよね。そんな当たり前を利用者さんにも味わってほしいと思っています。「まるで美容院に来たみたい」と思ってもらえるように、施術スペースにはピンクのかわいいカーペットを敷いて、お花を飾って、アロマを焚いて、[btp_line]おしゃれな空間づくりを心がけています[/btp_line]。

    施術に関していえば、スピードを意識してやることでしょうか。施術に時間がかかってしまうと、拘縮や麻痺のある方には負担がかかってしまうので。急いで雑にならないように、でも早く丁寧に仕上げる技術力は大切になっていきますね。

    訪問美容師のやりがいは?

    (桑田さん)施設では食堂をお借りして施術スペースを作ることが多いのですが、利用者さんがドアを開けたときに「今日は美容院の日だ!」と歓声をあげてくださるのがうれしいです。カットやメイクをするうちに、表情が明るくなって、笑顔が見られる瞬間もやりがいを感じます。

    メッセージカードや写真をずっと大切に残してくれる方も多く、亡くなられた際に「ハーブヘアさんにもらった写真を遺影にしました」とご家族から聞いたときは、涙が出そうでした。

    印象に残っている出来事はありますか?

    施術前に希望の髪型を選ぶ利用者さん

    (桑田さん)訪問美容を始めて3年目の頃、スタッフの1人が誤って90代の利用者さんを転倒させ、骨折させてしまう事故がありました。利用者さんは入院することになり、毎日スタッフと代わるがわるお見舞いに行ったのです。

    もちろんご家族の方は怒っておられましたが、私たちが毎日お見舞いに行く姿を見て、次第に心を開いてくれるようになりました。ご家族も忙しく、ほとんどお見舞いに行けなかったようで、代わりに来てもらえることが安心につながったようです。

    退院した後、利用者さんが「またシャンプーしてほしい」と頼んでくれたときは、うれしかったですね。数年後、その方が亡くなられたときはお葬式にも参列させていただき、今でも深く印象に残っています。

    今後の目標を教えてください

    ハーブヘアのスタッフさんと桑田さん(中央)

    (桑田さん)事業を始めた当初はスタッフも少なかったので、体調が悪くても「私が這ってでも行かなくては」と思っていました。ですが、今は人数も増えたおかげで、働きやすい環境が整っています。訪問美容のDVD教育テキストや訪問美容に必要なグッズ販売も行っているので、人材育成も頑張っていきたいですね。

    訪問美容師が増えれば施術できる利用者さんの数が増え、できることも増えていきます。利用者さんにとって選択肢が増えることにもなるでしょう。現状では施設側で訪問美容会社を決めるので、利用者さんが選べる環境ではありません。ですが、私たちが好きな美容院を選ぶように、利用者さんも訪問美容会社を選べるような世界になったらいいなと思っています。

    訪問美容師に求める人材像は?

    (桑田さん)施設で暮らす高齢者の方は、手入れのしやすいショートヘアを選ばれることが多いです。一般的な美容院ほどスタイルのバリエーションは多くないでしょう。そのため、いろいろな髪型がカットできることより、どんな疾患や障害の方も受け入れられる心と対応力が肝心になってきます。

    訪問美容の利用者さんは、一般的な美容院のお客様とは異なり、認知症や麻痺のある方、寝たきりの方もいらっしゃいます。利用者さんが施術中に尿漏れしたときには、適切に対応しなければなりません。[btp_line]どんなときも、自分のおじいちゃん、おばあちゃんだと思って接する[/btp_line]、優しさのある人に来てほしいです。
    介護や障害についての基礎的な知識も必要なので、私や一部のスタッフは「介護職員初任者研修」を受講しています。訪問美容師を目指す方は、介護・障害の知識を身につけると良いですよ

    これから訪問美容師を目指したい方、興味がある方へのメッセージをお願いします

    桑田さん(写真左)と事務スタッフの池田知佳子さん

    (桑田さん)訪問美容師は毎日違う場所で仕事ができるのが楽しいです。町の美容院で働いていた頃も良かったですが、外に出る機会が少なく“籠の中の鳥”だったなと思います。今はいろんな施設に出向き、いろんな方と出会い、交流できることがとても面白いです。

    働きやすさに関しては、土日休みが取れる点が大きいかもしれません。町の美容院は土日が稼ぎ時なので、子どもがいる方は難しいですよね。訪問美容の場合は、平日に出向くことがほとんどです。事前にスケジュールも分かっているため、シフトも組みやすいですし、夜遅くまで働くこともありません。理美容師の資格を持っている方で、子育てをきっかけに復職を諦めている方がいれば、ぜひおすすめしたいです。

    桑田さんのインタビューを終えて

    高校時代の出来事から訪問美容のニーズに気付き、ひたむきに道を歩んできた桑田さん。利用者さんを思いやるあたたかい気持ちがひしひしと伝わってきました。理美容師免許を持っている方であれば、研修を受けて訪問美容師として働くことも可能です。美容で介護に関わりたい、保有資格を活かしたいと思っている方は、訪問美容師を視野に入れてみてはいかがでしょうか?

    【訪問美容ハーブヘア】

    所在地広島市安佐南区西原3丁目11-3-303
    電話番号0120-931-814
    公式サイトhttps://herb-hair.com/
  • 「笑い」は元気の源!笑顔を引き出す介護芸人の仕事とは?

    「笑い」は元気の源!笑顔を引き出す介護芸人の仕事とは?

    テレビやライブなどで活躍するお笑い芸人。お笑いを見てたくさん笑ったあとは、心もスッと軽くなりますよね。「笑い」が免疫機能やストレスに作用するという研究もあり、介護業界でもお笑いを取り入れる流れが生まれています。
    今回は、広島でケアマネとお笑い芸人の2つの顔を活かし、[btp_line]「介護芸人」[/btp_line]として活躍中の鹿見勇輔さんにお話を聞きました。一見交わることのない「介護」と「お笑い」がどのように融合するのでしょうか?介護とお笑いの関係に興味がある方はぜひ読んでみてくださいね。

    ★2022年11月12日(土)に、「大切な人に想いを届けるACP(人生会議)」で鹿見さんが講演されます。詳しくは記事の最後をご覧ください。

    ※インタビューのため一時的にマスクを外しています。
    ※インタビュー実施日:2022年9月

    「鹿見勇輔 福祉のラジオ」番組収録風景

    [btp_box]鹿見勇輔(しかみ・ゆうすけ)さんプロフィール
    日本福祉大学大学院修了。「めぐみ指定居宅介護支援事業所」(広島市中区)でケアマネジャー(主任介護支援専門員)やデイサービスなどの施設運営をしながら「介護芸人」として活動。介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士、防災士の資格を持ち、RCCラジオ「鹿見勇輔 福祉のラジオ」(毎週水曜23:30〜24:00)でパーソナリティーも務める。[/btp_box]

    今回インタビューを行ったのは、「めぐみデイサービス御幸」(広島市南区)。「広島県でいちばん利用者様から喜ばれる回数の多い介護事業所になる」を行動理念に掲げ、送迎・入浴・食事などのサービスを通じて、社会的孤立の解消や心身の健康を目指し、在宅生活が継続できるように支援を行っています。

    [btp_box]★「介護芸人」とは?
    介護業界で活躍するお笑い芸人のこと。介護施設で働きながらお笑いの活動をしている人や、「レクリエーション介護士」など介護関連の資格を持っている人もいます。
    近年は、「吉本興業」の所属芸人が介護施設のレクリエーションを代行するサービスを行うなど、「お笑い」を取り入れる介護現場も増えています。[/btp_box]

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    介護芸人になったきっかけを教えてください

    第48期尾道いきいき大学「介護予防」講演会の様子

    (鹿見さん)子どもの頃からお笑いが好きで、テレビに関わる仕事に憧れていました。学生のときは授業も聞かず、ネタ作りに励んでいましたね(笑)高校卒業後、親に内緒でお笑い養成所「東京よしもとクリエイティブ・エージェンシーNSC」に入ったのはいいのですが…。周りとの実力差を痛感し、本当に芸人になれるのかと悩んでいました。そんなとき、介護の仕事をしていた母親から「広島に帰ってこい」と言われ、母親の勧めで介護福祉専門学校に通うことに。正直言うと、当初は全然やる気がありませんでした(笑)

    介護の世界に対し初めて前向きな気持ちになれたのは、専門学校の授業の一環で、デイサービスを見学したときです。レクリエーションに一生懸命励む利用者さんを目にして「お年を召されて不自由なこともあるのに、なんでこんなに頑張れるんだろう」と感動しました。

    (鹿見さん)当時は芸人の夢を諦めて投げやりになっていましたから、元気なおじいちゃんたちの姿が余計にキラキラとして見えましたね。見学以来、介護の勉強にも意欲的になり、介護福祉士や社会福祉士、精神保健福祉士などの資格を取得しています。

    再び「お笑い」が日の目を見たのは、2013年のデイサービスでの敬老会のときです。初めて披露した落語の「寿限無」がウケて、「介護現場でもお笑いが使えるのでは」と思いました。そこで介護をしながら[btp_line]芸人の経験を活かす「介護芸人」の道[/btp_line]を考え始めたのです。

    介護芸人の仕事内容は?

    (鹿見さん)私は普段ケアマネジャーとして働いているので、月曜日から土曜日までは介護、日曜日はお笑いの仕事をしています。主催のお笑いライブは月1回、リクエストがあれば地域のいきいきサロンや、行政からの依頼でライブに出演することもあり、年間50回程度は舞台に立っているでしょうか。新型コロナウイルスの影響で生のお笑いライブは難しくなりましたが、オンラインのライブ配信に切り替えて継続しています。

    お笑いだけでは間口が狭いので、「学び」と「お笑い」をセットにして、地域の講演会に登壇する機会も多いです。講演会では、介護予防やACP(人生会議:もしものときのために、希望する医療やケアを事前に家族や医療チームと話し合っておくこと)などの話をしています。真面目な話をしつつ、ときどき面白い話を挟んでいくと、聞く側も飽きないですよね。

    介護芸人の仕事で、いつも気を付けていることは?

    (鹿見さん)テレビで見るお笑いはスピードが速く、ほとんどの高齢者はついて来られません。ですから、話すスピードはゆっくり、うまく伝わっていなかったら繰り返すといった工夫が必要になります。お笑いの世界ではタブーとされる「説明」や「繰り返し」が、笑いを引き出すコツになるのは面白いですよね。

    舞台に上がったら、まずは自己紹介をします。[btp_line]「目の前にいる人が誰なのか」が分かると安心感につながり、笑いも起こりやすくなる[/btp_line]のです。長いくらい丁寧な自己紹介をしてから、ネタに入っていきます。

    ネタに関しては、誰もが共通する話題を中心にして、自虐ネタは避けています。私たちにとっては身近な自虐ネタですが、利用者さんの世代では「笑ったら失礼なのではないか」と思うみたいですね。なので、自虐ネタを使うときはあらかじめ「笑っていいですよ」と伝えることもあります。

    (鹿見さん)鉄板ネタは、健康や地域に関するものですね。「はい、今から深呼吸します。鼻から吸って…耳から吐きます」のような、分かりやすいネタが意外と笑いが取れます。馴染みのあるメロディが聞こえると、うとうとしていた方もパッと顔を上げることもあるので、歌を歌ってわざと音を外すといったネタもよく披露しています。

    その場のお客さんの雰囲気を見ながら、予定していたネタを急遽変更することも珍しくありません。瞬間的な判断が求められますが、そこが介護芸人の楽しい部分でもありますね。

    介護芸人のやりがいは?

    (鹿見さん)介護とお笑いの二足のわらじを履いている私は、利用者さんから見ると「お笑いをやっている介護のお兄ちゃん」です。その気軽さから、困ったときに相談されることも多く、頼りにされていると感じたときはうれしく思います。

    一度は諦めたお笑いを、介護現場で活かしている私は、いつも「介護に生かされている」と思っています。介護芸人を名乗れるようになったのも、人から評価してもらったからです。舞台で笑いを取ること、人から相談されること、どちらも自分にとっての生きがいですね。

    今後の目標を教えてください

    鹿見さんのイメージキャラクターを近所の方が描いたポスター

    (鹿見さん)地域の方に向けてお笑いをすることもあるので、困ったときの身近な相談役になっています。ただ、事態が深刻化した状態で相談を持ち掛けられることもあり、「もっと早く相談してくれていたら…」と悔しく思うときが多いです。

    地域包括支援センターがありますが、そもそも存在を知らない方や、「相談したらお金がかかるかも」と相談をしない方もいます。歯がゆいですが、高齢者の方から発信がないと、支援の手が差し伸べられないのが現状です。

    私は、高齢者の方たちが元気で暮らせる社会を目指しています。そのために、私たちのようなスタッフや地域とのつながりを作っていくことが大切です。つながりがあれば、何かあったときにすぐ相談でき、事態の悪化を防げますよね。

    元気の要は、人と話したり、笑ったりすることです。[btp_line]お笑いライブや講演会を通してつながりの場を提供し、高齢者の方が元気でいられる社会を作っていきたい[/btp_line]と思っています。

    これから介護芸人を目指したい方、興味がある方へメッセージをお願いします

    (鹿見さん)お笑い芸人を目指す方は、人と話すのが好きな方が多いですよね。相手と会話が続けられる人材は介護現場では重宝されるので、安心して介護の世界に飛び込んでほしいです。施設の運営者でもある私としては、やる気がある方、誠実な方に来てほしいと思っています。たとえ資格を持っていなくても、[btp_line]誠実に対応すれば心が伝わります[/btp_line]。親身に話を聞いてくれる、優しく接してくれる方を、利用者さんは求めていますしね。

    芸人としての仕事を得るには、社会人としてのマナーが身に着けることが重要です。芸人に仕事を依頼する方は、会社の社長さんや公共の施設で働いている責任者さんたちが多いですから。介護芸人を目指すなら、最低限のビジネスマナーを知っておいて損はありませんよ。

    鹿見さんのインタビューを終えて

    介護芸人としてさまざまな場で活躍する鹿見さん。笑いの力を活かし、今日も利用者さんの笑顔を引き出しています。レクリエーションのネタに悩んでいる方、介護芸人の仕事に興味がある方は、ぜひ鹿見さんのお笑いライブや講演会に参加してみてはいかがでしょうか?

    ★2022年11月12(土)、ACP(人生会議)についての講演会で、鹿見さんが出演されます。

    取材協力【有限会社めぐみ】

    所在地広島市中区西川口町4-31
    電話番号082-532-6800
    公式サイトhttp://megumi-care.co.jp/
  • 新人作業療法士さんにインタビュー!訪問リハビリテーションのやりがいとは?

    新人作業療法士さんにインタビュー!訪問リハビリテーションのやりがいとは?

    利用者さんの日常生活を支えると言っても過言ではない作業療法士の仕事。毎日の暮らしを送る中で必要な「作業」を、利用者さんの意向に沿いながらサポートする作業療法士の役割は、とても重要です。今回は、広島市の「訪問看護ステーションかがやき」で、訪問作業療法士として働く大西優美さんにインタビューしました。訪問リハビリテーションの仕事内容や仕事のやりがいなどを詳しく知りたい方は、ぜひ一読くださいね。

    ※インタビュー実施日:2022年7月

    プロフィール

    [btp_box]大西優美(おおにし・ゆみ)さんプロフィール

    大学在学中に、作業療法士の資格を取得。大学院卒業後、総合病院(急性期・回復期)に7年間勤務したのち、2022年4月から「訪問看護ステーションかがやき」に入職[/btp_box]

    2022年4月より訪問作業療法士として、訪問看護ステーションで働き始めた大西さん。作業療法士を目指した経緯や、訪問リハビリテーションへ転職した理由などを伺いました。

    作業療法士とは?

    [btp_box]作業療法士(OT)は日常生活に関わるすべての活動を「作業」ととらえ、障害やケガなどが原因で難しくなってしまった作業を、生活が送れるようにサポートするリハビリテーションの専門職です。食事や料理、字を書くといった生活動作だけでなく、復職に向けたリハビリや、地域活動への参加など社会的適応能力に対する支援も行います。[/btp_box]

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    作業療法士を目指したきっかけは?

    (大西さん)母が作業療法士をしていたことが大きく影響しています。仕事の話を聞くこともあったので、職業のイメージがつかめていました。中学生の時、近所に発達障害のお子さんがいて、そうした子供たちをサポートする職種の人を見る機会が多かったことも、目指した動機のひとつになっています。

    作業療法士の仕事内容は?

    (大西さん)利用者さんにとっての大切な「作業」を、ご本人が満足する形でできるようにサポートする仕事です。ここで言う「作業」というのは、仕事だったり、家事だったり、趣味だったり、個々で異なります。着替えたり、顔を洗ったり、トイレに行ったりという生活動作も「作業」です。身体に麻痺のある方や、精神障害のある方、骨折した方など、いろいろな原因で日常の「作業」が難しくなった方に対してリハビリテーションを行います。

    訪問リハビリテーションへ転職したきっかけは?

    (大西さん)今の職場に転職するまで、ずっと病院勤務でしたが、いつかは利用者さんの生活場面に関わりたいと思っていました。生活に直結する作業をサポートする職業だからこそ、訪問リハビリは作業療法士が一番活躍できる場だと思うので転職を決意しました。

    訪問リハビリテーションへ転職して感じていることは?

    (大西さん)利用者さんが実際に生活しているその現場で、普段から使っている道具を使ってリハビリができるので、[btp_line]毎日がとても新鮮[/btp_line]です。時間もあっという間に過ぎます。自宅で練習出来たり、ご家族と密に関わったりできるのは、訪問リハビリの強みだなと実感しています。生活の工夫など、利用者さんから学ぶことも多いですよ。

    訪問リハビリテーションだからこそ必要な能力は?

    (大西さん)一人で訪問するので、リスク管理はもちろん、臨機応変さなどが求められます。ですが、分からないことは職場の人にすぐ聞くようにしているので安心です。身体のことなら理学療法士さんが得意だし、薬のことなら看護師さんに相談しています。仕事の時は一人で訪問しますが、現在の職場は、他の職種の方ともLINEで情報交換したり、相談したりできる環境なので心強いです。

    訪問リハビリテーションでの作業療法士の仕事内容は?

    (大西さん)今は[btp_line]多くて1日5~6軒を訪問[/btp_line]しています。時間は、1軒につき約40分~1時間ほどですね。車で利用者さん宅を訪問し、終了後にiPadで報告書を書いて終了という流れです。

    利用者さんは70~80代の方が多いですが、中には脳卒中のため身体に麻痺のある50~60代の方もおられます。麻痺があっても「家事がしたい」「料理がしたい」とおっしゃる方も多いです。

    ただ、作業療法でのリハビリは、[btp_line]身体の機能を回復させることがすべてではありません。[/btp_line]大切なのはその方の「生活」です。機能回復に固執しすぎるとご本人もしんどいので、道具を使ったり、環境を整えたりして生活に目を向けてもらうことが作業療法士の仕事だと思っています。

    例えば、利き手に麻痺がある方には、反対の手を使う訓練をしたり、「自助具」を使ったりして工夫します。箸がうまく持てない方には、トングのように繋がった箸を使ってもらったり、腰が痛くてかがめない方には、靴を履くときに靴ベラを使ってもらったり、お風呂掃除には、柄の長いブラシをすすめたり…。工夫次第でできるようになる作業は多いので、利用者さんの状態に合わせた提案をしています

    あとは、利用者さんの在宅生活を支えているご家族とのコミュニケーションや、ご家族に対するケアを同時にすることも、作業療法士の役割だと思っています。ご家族から「この方法どう?」とアドバイスを求められる場面も多いです。介護に対するストレスを抱えているご家族も少なくないので、お話を聞くだけでもストレス軽減に繋がっているのではないかと思っています。

    作業療法士の仕事のやりがいは?

    (大西さん)訪問の頻度は週に1~3回のことが多いですが、利用者さんから「前できなかったことができたよ!」とか「言われた通りにやってみたらできた」と言ってもらえるのがうれしいですね。アドバイスしたことを、[btp_line]生活の中で実践してもらえて、すぐにフィードバックが来るのが、訪問リハビリのいいところです[/btp_line]。これが病院だと、その場で実際に試すことができませんから。長い生活の中の、僅かな時間の関わりだからこそ、難しさはありますが、利用者さんの笑顔や良い変化を聞けた時はとっても嬉しく、やりがいがあります!

    作業療法士として難しいと感じている場面は?

    (大西さん)利用者さんに継続して練習してもらうことが大切なので、どうやったらモチベーションをあげてもらえるかな?と考えることが難しいです。リハビリの基本は、ご本人の希望に沿って介入することです。単に指示するだけだと続かないので、まずは共感するところから始めて、利用者さんの気持ちに沿った対応を心がけています

    これからの目標は?

    (大西さん)大学院に在学していた時、脳卒中の患者さんのご家族に対するサポートの研究をしていました。ご家族にどんな能力が必要なのかなどを研究していたので、その研究内容を今後仕事に生かしていけたらいいなと思います。あと、認知症の方へのリハビリにも携わってみたいです。
    また、今後はリハビリ中の方の復職(職場復帰)をサポートするための制度を知る必要があるなと実感しています。復職に向けて、パソコン入力する練習や、電車に乗ったり、職場までのルートを一緒にまわったり…そうした復職サポートができるようになりたいです。以前働いていた病院では関わることがなかったケースなので、これから勉強しなきゃいけないなと思っています。

    作業療法士の仕事の範囲はとても広いです。生活が豊かになるなら、どんなサポート方法でもいいと思うんですが、利用者さんだけでなく、ご家族との関わりなどもより必要だと思っています。その方の生活が豊かになることであれば、どんなサポートでも、どんな方法でも考えていきたいです。なので、訪問リハビリに必要な自分の知識の幅を、もっと増やしていきたいと思います。

    これから作業療法士を目指す方、興味のある方へのメッセージ

    作業療法士は、利用者さんの生活に直結したアドバイスをするので、リハビリに対するダイレクトな反応が返ってくることに、やりがいを感じます。
    私はいまだに、毎回緊張しながら訪問しています(笑)。一人で訪問するので、臨機応変さが必要だったり、何があっても一人で対処しないといけなかったりすることも…毎日ドキドキで緊張感はありますが、楽しいです!

    実は、訪問リハビリって、私にはまだ早いと思っていました。もっと経験を積んでから…とも考えていたんですが、実際に今の職場に入ってみたら、周囲の方もやさしいし、すぐに相談できるし、転職して本当によかったです。

    新人作業療法士さんのインタビューを終えて

    総合病院の勤務から、訪問看護ステーションへ転職された大西さん。ほかのスタッフさんとも連携を取りながら、やりがいを持って働いている様子が目に浮かぶインタビューでした。訪問リハビリならではのケースを経験され、もっと学びを深めたいと意欲的に仕事に取り組んでおられるようですね。利用者さんの日常生活を、自宅という生活に直結した現場でサポートしてみたい方は、訪問リハビリテーションの作業療法士に挑戦してみてはいかがでしょうか。

    【訪問看護ステーションかがやき】

    所在地広島市安佐南区祇園2-47-8
    電話番号082-875-6752
    対応エリア広島市(中区、東区、西区、安佐北区、安佐南区)
    公式サイトhttps://www.lsi-kk.co.jp/
  • 「福祉ネイリスト」として広島で活躍する中尾将吾さんにインタビュー!

    「福祉ネイリスト」として広島で活躍する中尾将吾さんにインタビュー!

    「不要不急」ではないけれど、生活に彩(いろどり)を添えてくれるのが美容。髪型や服装など、身なりを整えると気分も上がりますよね。年齢を重ねても、体に障害があっても、気軽におしゃれを楽しみたい…そんな願いを叶えてくれる[btp_line]「福祉ネイリスト」[/btp_line]という仕事をご存知ですか?
    今回は、広島で福祉ネイリストとして活躍する中尾将吾さんにお話を聞きました。30代で転職した理由や福祉ネイリストのやりがい、大切にしていることなどを語っていただきました。福祉ネイリストの仕事に興味がある方は、ぜひ読んでみてくださいね。

    プロフィール

    [btp_box]中尾将吾さん
    医療機器メーカーの営業職を経て、2020年から福祉ネイリストとして開業。現在、訪問ネイルケアサービス「ファミーユ」代表、日本保健福祉ネイリスト協会で理事を務めるなど活躍中。[/btp_box]

    ※福祉ネイリストとは?
    高齢者介護施設や福祉施設などを訪問し、ネイル施術を行うネイリストのこと。「日本保健福祉ネイリスト協会」の認定校でカリキュラムを修了することで認定される民間資格です。
    高齢者や障害のある方、自宅療養中の方などが対象です。施術ではマニキュアを使用し、施設や病院ですぐに落とせるように配慮。ネイルを通して笑顔を引き出す化粧療法として、生活の質(QOL)を向上させるきっかけにも役立っています。

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    福祉ネイリストの仕事を始めたきっかけは?

    (中尾さん)私が20代の頃、祖父が認知症を患い、母が苦労しながら介護する姿を見たのがきっかけです。大変そうな母の姿を見ながらも、私は何も手伝えませんでした。介護は約3年間にわたり、祖父が亡くなったときは寂しい思いと、介護から解放された母を見て、ほっとした思いが複雑に入り混じっていましたね。

    祖父が認知症になった頃、私はアパレルや医療機器メーカーの営業職の仕事をしていました。仕事で京都や滋賀、大阪、岡山を転々とする中、35歳になって「今の仕事を続けるか、転職するか」と考え始めたときです。偶然ネットで、吉備国際大学の准教授が「爪のケアが認知症の問題行動を軽減させる効果が期待できる」と発表した研究結果を見かけました。

    認知症を患うと暴力や暴言、徘徊などの“問題行動”が起きることがあるのですが、「ネイルを続けていると、笑顔が増え、問題行動が減った」と明らかになったそうです。問題行動が減れば、介護者の負担を減らすことにもつながりますよね。そんな中で、介護施設を訪問してネイル施術をする「福祉ネイリスト」の存在を知りました。介護に苦労する母の姿を見ていた経験もあって興味を惹かれ、思い立って福祉ネイリストの道に進みました。

    福祉ネイリストの仕事をする中で、難しかったことは?

    (中尾さん)高齢者施設の利用者さんの多くは80~90代で、ほとんどの方がネイルをした経験がありません。爪へのコンプレックスも相まって、ネイルをためらう方は多いです。スタッフさんの力を借りながら、「やってみませんか?」と声をかけるところから始まるのは、一般的なネイリストと比べると難しい部分かもしれません。お体に麻痺のある方もいらっしゃるので、ときには背面から施術する場合もあり、ちょっとコツがいります。

    そもそも、施設を訪問してネイルをするには、施設長さんの許可が必要です。提案をしても「ネイルなんて」と断られるケースは少なくありません。施設長さんは年配の男性が多く、ネイルに馴染みがない方も多いですからね。髪を切ったり、髭を剃ったりする美容・理容サービスは受け入れてもらいやすいですが、ネイルは「不要不急」と思われがちです。

    またご家族の中にもネイルへの抵抗感がある方がいて、息子さんから「いい年なのにおしゃれなんて」と言われたために、せっかくのネイルを取ってしまった方もいました。[btp_line]何歳になってもおしゃれは心を躍らせてくれるものです。[/btp_line]多くの方にネイルの魅力を理解してもらうには、まだまだ努力が必要だなと思わされます。

    福祉ネイリストの仕事をされる中でうれしかったこと、やりがいを感じることは?

    (中尾さん)最初は「ネイルなんて」とためらう方がほとんどですが、[btp_line]爪が綺麗になると皆さん笑顔になっていきます[/btp_line]。髪やメイクは鏡を見なければ分かりませんが、ネイルは手元のおしゃれなので、自分でいつでも確認できますよね。ふとした瞬間に目に入る、彩った爪は気持ちを明るくさせてくれるものです。利用者さん同士がお互いに爪を見せ合って、「綺麗ね」と笑っているのを見ると、私まで笑顔になれます。

    同じ施設に訪問し続けていると、最初に会ったときは身なりに気を遣っていなかった方が、髪を整えたり、服装に気を遣ったりと、如実に変化が見られるときもあります。ネイルをきっかけに、「〇〇してみようかな」と前向きになる姿を見られるのは、何よりうれしいですね。初めは落ち着いた色を選んでいた方が、「今日は赤色に塗って」と鮮やかな色を頼まれるときも、心が躍ります。

    基本的にネイルは女性が対象ですが、男性に施術することもあります。爪を磨いたり、透明なマニキュアを塗ったりすることが多いです。以前、「ギターの演奏会があるから爪を綺麗にしてほしい」と男性の利用者さんから頼まれたことがありました。ギター演奏はもちろん、ネイルも大好評だったようです。[btp_line]ネイルが誰かの生活を豊かにできるときは、大きなやりがいを感じますね。[/btp_line]

    福祉ネイリストの仕事をされる中で大切にしていることは?

    (中尾さん)爪を美しく仕上げる技術も大切ですが、特に大切にしているのは利用者さんとのコミュニケーションです。年を重ねると、人と話す機会が減って、部屋にこもりがちな方もいますよね。マニキュアを塗って乾かすまで、大体1時間程度。施術中に会話を楽しんでもらうことを、何より重視しています。コミュニケーションを取る上で、心掛けていることは最低3回お名前を呼ぶこと。名前を呼ばれると「自分に関心を持ってくれた」とうれしくなりますからね。

    ネイルの施術は、手と手が触れ合います。どんなに爪が綺麗に仕上げられても、心の触れ合いを楽しんでもらえないのでは意味がありません。[btp_line]心と心が触れ合えば、笑顔あふれる楽しい時間になります。[/btp_line]ネイルと福祉ネイリストとの交流を通して、前向きな気持ちになってもらえるように力を入れていきたいです。

    これからの目標や取り組みたいことは?

    (中尾さん)私1人でネイルできる人数は限りがあります。ですので、訪問ネイルサービス「イロドリのおくりもの」を全国に広めていくことが目下の目標です。「イロドリのおくりもの」は[btp_line]訪問ネイルをプレゼントするサービス[/btp_line]です。依頼を受けたら、福祉ネイリストが指定の場所に伺い、施術を行います。現在は全国15エリア(北海道、福島、東京、千葉、埼玉、栃木、茨城、長野、岐阜、愛知、三重、大阪、岡山、広島、沖縄)で展開中です。コロナ禍でいろいろな制限がある今だからこそ、真心のこもったサービスを届けたいと思っています。

    福祉ネイリストはまだまだ世の中に広く認知されていません。美容師と聞いてすぐイメージが浮かぶように、福祉ネイリストが誰もが知る仕事になるように、社会的な確立を目指していきたいです。また福祉ネイリストとして十分な収入が得られるよう、経済的な確立も叶えたいと考えています。

    福祉ネイリストのお仕事を目指している方や興味がある方へのメッセージ

    (中尾さん)[btp_line]福祉ネイリストの仕事は、笑顔や勇気を与えます[/btp_line]。たとえネイルの技術が80点でも、一生懸命関わろうとする「思い」があれば、私にとっては100点です。ネイルの技術は練習を重ねて磨いていけます。施設訪問の場合は、利用者さんの評判はもちろん、スタッフさんの評判も良くなければ次回も呼んでもらえません。あたたかい心と確かな技術で、両者の信頼を獲得していけばいいですよ。

    現在、福祉ネイリストとして活躍する人の中には、子育て中のママもいます。1~2時間あれば施術できるので、時間に都合がつきにくい方もサッと働ける面が魅力です。私のスクールでは、生徒さんの予定に合わせて開講日を設定しています。仕事や育児がある方も都合がつきやすいので、興味がある方はぜひお問い合わせください。

    福祉ネイリストである中尾さんのインタビューを終えて

    家族の介護の経験から、福祉ネイリストの道を歩んだ中尾さん。親しみのある笑顔や口調から、利用者さんの心を掴んでいるのだろうと感じました。中尾さんのスクールには、「ネイリストとしての幅を広げたい」「福祉の仕事に興味がある」と福祉ネイルを学ぶ方もいます。ネイルを通して福祉・介護のお仕事に興味がある方は、ぜひ一歩踏み出してみませんか?

    【訪問ネイルケアサービス ファミーユ】

    電話番号080-1948-6273(中尾さん)
    出張ネイルギフトサービス「イロドリのおくりもの」公式サイトhttp://irodori-gift.com/
    公式Instagramhttps://www.instagram.com/nakao_famille/?hl=ja
    JHWN認定スクール広島校公式サイトhttp://hirosima.fukushinail.jp/  

  • 新人言語聴覚士さんにインタビュー!発話や口腔機能をサポートする仕事の魅力とは?

    新人言語聴覚士さんにインタビュー!発話や口腔機能をサポートする仕事の魅力とは?

    リハビリといえば、「身体機能」の訓練をイメージする方が多いかもしれませんが、「言語機能」「口腔機能」に特化した訓練もあります。[btp_line]言語聴覚士[/btp_line]は、発話や嚥下などが困難な方に向けたリハビリを行う専門職です。
    今回は広島市の「訪問看護ステーションかがやき」で言語聴覚士として活躍する逸見莉香さんにお話を伺いました。高校時代の職場体験をきっかけに、言語聴覚士を志した逸見さん。言語聴覚士のやりがいや面白さなどを語っていただきました。「言語聴覚士って何?」と興味を持った方は、ぜひ読んでみてくださいね。

    ※インタビュー実施日:2022年7月

    [btp_box]逸見莉香(へんみ・りか)さんプロフィール
    大学で言語聴覚士の資格を取得。急性期病院、回復期病院に勤務したのち、「訪問看護ステーションかがやき」入職。現在は施設・在宅でのリハビリを行っています。[/btp_box]

    [btp_box back=”on”]★言語聴覚士とは?音声・言語・聴覚機能に障害がある方に向けて、機能向上を図る訓練や助言・援助を行う専門職。言語聴覚士法に基づく国家資格で、ST(Speech Therapist/スピーチセラピスト)と呼ばれることもあります。介護現場では、加齢による摂食・嚥下障害、脳梗塞などによる言語障害に対し、リハビリを行うことが一般的です。言語聴覚士は理学療法士や作業療法士と比べて人数が少なく、全国的に需要が高まっています。[/btp_box]

    関連記事:

    言語聴覚士を目指したきっかけは?

    (逸見さん)学生の頃から「手に職をつけたい」と考えていました。弟が病気がちで病院に行く機会が多かったので、自然と医療職を目指すようになったのです。

    「言語聴覚士」を初めて知ったのは高校生の頃ですね。人と話をする、食事をする「口」のリハビリは少し特殊で、口腔機能って大切だなと実感しました。

    実際にST(言語聴覚士)さんに会ったのは、高校の夏休みの職業体験のときです。職場体験では地元の病院に行き、医師や看護師さんなどの働く姿を目にしました。そこで、[btp_line]患者さんに寄り添うSTさんの姿を見て、「私もこんなリハビリをしたい!」と思ったのです。[/btp_line]

    そこから言語聴覚士を目指して、受験勉強を開始しました!人生で一番勉強したと思います(笑)言語聴覚士になる上で臨床実習は必須なので、大学3年の頃に通っていた大学が運営する病院へ実習に行きました。期間は全16週間です。

    実際に現場を体験してみて、座学だけだと分からないことがたくさんあり、「まだまだ勉強しないといけないな」と痛感したのを覚えています。特に嚥下は命に直結することなので、患者さんを目の前にして、リハビリの重要さや役割の重さも実感しましたね。

    大学卒業後は急性期病院に4年勤務して、広島県に転居しました。回復期病院に勤務したのち、現在の職場(訪問看護ステーションかがやき)に就職しました。1年前に結婚して、いずれは子供も欲しいと考えているので、子育てと仕事を両立しているスタッフが多い現在の職場を選びました

    言語聴覚士の仕事の内容は?

    (逸見さん)今は、グループ内のサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)に訪問してリハビリを行う機会が多いです。加えて、在宅療養の方も訪問しています。
    嚥下のリハビリを行うときは、実際に食事をしていただきながら、嚥下の筋トレをすることもあります。例えば、おでこを手でグッと押したまま下を向いてもらうと、喉に力が入りますよね。こうやって、喉の筋肉を鍛えるんです。また口周りの筋肉を鍛えたり、口の前のティッシュペーパーをフーっと吹いて呼吸の練習をしたり、痰を出せない方も多いので吐き出す訓練をしたり…。生活に直結した訓練が中心ですね。

    ケアプランで「食事中にむせることが多いので、食事を評価してください」という依頼を受けることもあります。そんなときは、食事の形態(もっと小さく刻む、ミキサー食にする、とろみをつけるなど)、食べる時の姿勢、スプーンの大きさなどをアドバイスします。
    最近は、ご家族から「どうすれば食べられるようになりますか?」と相談されることも多いです。病院では機能向上を目指すリハビリを行っていましたが、在宅・施設で暮らす方にはその人らしく安全に暮らすためのリハビリが求められます
    維持期(機能を落とさず維持していく事を目指す時期)のリハビリと訪問リハビリの分野は、病院勤務の頃と異なる点が多く、覚える内容も多くて毎日バタバタです(笑)他職種の方と連携する中では、リハビリに対する考え方も違う方もいて、難しさを感じるときもあります。

    これからの目標や取り組みたいことを教えてください

    (逸見さん)まだまだ若輩者なので、[btp_line]利用者さんや他のスタッフにとって信頼できるSTになりたいです[/btp_line]。そのためにも、たくさん経験を積んで、成長していけたらと思います。周りには尊敬できるスタッフもSTも多くいますから、皆さんから学び取っていきたいですね。
    また、STの認知度も上げていきたいです。STの人数はOT・PTさんのように多くありません。STの仕事を広く知ってもらうためにも、実績を作っていきたいです。

    これから介護の仕事を目指している方や、興味を持っている方へのメッセージ

    (逸見さん)言語聴覚士の仕事は、本当に面白い仕事だと思います。PTさんOTさんは運動機能系のリハビリを担当されていますが、「言葉」や「嚥下」などの特殊なリハビリをするのはSTだけです。その分、責任も重いけれど、やりがいを感じます。

    病院で働いていた頃は、患者さんが退院してしまうと、患者さんの「その後」は基本的に分かりませんでした。その点、[btp_line]訪問リハビリの良いところは、患者さんの在宅の生活に関われるところ[/btp_line]です。セラピストとして、人が一番長い時間を過ごす在宅での時間をサポートできる点に魅力に感じています

    (逸見さん)利用者さんは一人ひとり違うので、それぞれに合った対応を取るのは大変です。ですが、試行錯誤して導き出したことが利用者さんのプラスになったら、達成感に繋がります。たとえ難しい状況でも、医療や介護は1人ではなくチームで関わる仕事なので、周りのフォローも得られやすいです。「一人じゃない、頼れる人がいる環境」というのは、迷っている方にとっては心強いと思います。言語聴覚士の仕事に興味がある方は、勇気を出して飛び込んでみてほしいですね。

    言語聴覚士は今後も必要とされる仕事!

    発話や嚥下機能に特化したリハビリを行う言語聴覚士。「伝えたい」「食べたい」といった思いをサポートすることは、その人らしい生活を送るために不可欠です。病院・施設・自宅ごとに求められるリハビリの形は異なりますが、チームで対応する介護・看護の現場では一人で全てをやりきる必要はありません。逸見さんのように、チームと一緒に成長していけば大丈夫!言語聴覚士の仕事に興味が沸いた方は、ぜひ受験方法も調べてみてくださいね。

    【訪問看護ステーションかがやき】

    所在地広島市安佐南区祇園2-47-8
    電話番号082-875-6752
    公式サイトhttps://www.lsi-kk.co.jp/visiting-nurse-station/

    ★2022年9月1日、広島市南区仁保新町に「訪問看護ステーションかがやき南」オープン!

  • ケアマネジャーさんにインタビュー!介護事業所や関係機関とのパイプ役。仕事の魅力・やりがいとは?

    ケアマネジャーさんにインタビュー!介護事業所や関係機関とのパイプ役。仕事の魅力・やりがいとは?

    利用者さんの自宅を訪問し、ご本人やご家族の思いを聞き出し、適切なケアプランを作成する[btp_line]ケアマネジャー[/btp_line]。今回は「介護相談室かがやき」(広島市)でケアマネジャーとして活躍する福間紀江さんにお話を聞きました。介護に欠かせないケアマネジャーの魅力ややりがいを語っていただきました。食事・排泄介助などの直接的な支援だけでなく、総合的な介護支援に興味がある方はぜひ読んでみてくださいね。

    ※インタビュー実施日:2022年7月

    [btp_box]福間紀江(ふくま・のりえ)さんプロフィール
    歯科衛生士として5年勤務後、デイサービスに勤務しながら、2017年にケアマネジャー(介護支援専門員)資格を取得し、同年「介護相談室かがやき」に入職。現在、広島市西区・東区を中心に、約40件を担当。[/btp_box]

    [btp_box back=”on”]★ケアマネジャー(介護支援専門員)とは?
    ケアマネジャーとは、利用者さんに必要な介護サービスを見極め、介護サービス事業所と調整を行う専門職です。市区町村から依頼を受けて、利用者さんの自宅を訪問し、身体の状態や家庭環境などをチェック。調査結果をもとに、主治医や介護事業所の担当者などとやり取りしながら、ケアプランを作成します。[/btp_box]

    ケアマネジャー(介護支援専門員)になったきっかけを教えてください

    (福間さん)以前デイサービスに勤務していたとき、ケアマネジャーという職種を知り、「こういう支援の形もあるのだ」と興味を持ったのがきっかけです。介護現場での介助は体力が必要な部分も多いですが、ケアマネジャーであれば介護サービスをプランニングする形で介護に関われます。総合的な支援ができるところに惹かれて、資格の勉強を始めました。当時はデイサービスで食事・排泄介助などの通常業務をこなしながら、半年かけて毎日コツコツ勉強し、資格を取得できました。

    ケアマネジャー(介護支援専門員)の仕事内容は?

    (福間さん)ご自宅を訪問して、利用者さんやご家族の思いを聞き取ります。その上で必要な支援・介護サービスを見極め、ケアプランを作成するのが主な仕事です。
    最近は、「老々介護」や「8050問題(はちまるごうまる問題/同居する50代の子供の生活を80代の親が支えている状態)」など、ご家庭内に問題を抱えているケースも多く、ケアプラン作成が難しいケースも少なくありません。またご家族の経済的な問題も大きいですね。必要なサービスを受けられるように、いつも試行錯誤しています。

    現在は、広島市西区・東区を中心に、約40人の利用者さんを担当しています。介護サービスが始まったら、モニタリングのために定期的(月1回)に訪問し、介護サービスが適切かチェックします。介護度が重い方も多いので、途中でプラン変更することも珍しくありません。
    「サービス担当者会議」では、その方が望む生活を維持するにはどうしたらいいかを、各専門職が話し合い、協力して対応します。今は「多職種連携」といって、1人の利用者に対し、各専門職がチームで対応することが主流です。ケアマネはその「ハブ(中心)」としての役割が求められているため、難易度が高くなります。

    今の職場(介護相談室かがやき)は、同じ事業所内に訪問看護師や理学療法士などの専門職が在籍しているので、連携がとりやすいのがメリットですね。

    ケアマネジャーの仕事で、いつも気を付けていることは?

    (福間さん)[btp_line]ご家族にこまめに連絡を入れること、何か起きた時にすぐ対応すること[/btp_line]です。信頼関係を築くには、こまめな連絡が欠かせません。ご家族のほとんどが「連絡はLINEで」と希望されるため、連絡をするときはもっぱらLINEです。電話よりも自由度が高いですし、写真や動画も送れて便利ですよね。

    新型コロナウイルスが流行してからは、ご家族が介護施設内に入れず面会できないことも多くなりました。そんなとき、ご本人の様子を動画で撮影してLINEで送ると喜ばれます。特に遠方に住むご家族の方は、心配して様子を知りたがっていますから。

    最近は連絡手段も多種多様になってきたので、ご家族や事業所などいろいろな方とのコミュニケーションが取りやすくなった印象です。

    (福間さん)最近ではタブレット(iPad)も活用して、利用者さんやご家族の様子などを細かく記録し、共有しています。担当件数が増えると、どうしても1件あたりにさける時間が少なくなります。そのため、意識して個別対応の時間を取り、丁寧に接することを心がけています。

    在宅介護はご家族への負担も重いです。ご本人と同時にご家族の支援も必要なので、適切な支援をするために、広く情報を収集することも大切にしています。住み慣れた自宅で介護を受け、暮らし続けることだけがケアプランの目的ではありません。[btp_line]利用者さんが将来的に介護保険から「卒業」するために、「自立」を促す大切な役割も担っています。[/btp_line]

    ケアマネジャーの仕事のやりがいは?

    (福間さん)利用者さんとご家族に信頼されていると感じるときですね。いつも試行錯誤の連続なので「これで良かったのだろうか」と不安になることもあります。ですが、信頼を寄せて任せてもらえると、「よかった。間違っていなかった」と思いますね。ケアプランをうまく立てるには、[btp_line]信頼関係の構築が欠かせません[/btp_line]。だからこそ、一人ひとりへの丁寧な対応が大切になっていきますね。

    これからケアマネジャーを目指したい方、興味がある方へのメッセージをお願いします

    (福間さん)ケアマネの仕事は、[btp_line]利用者さんやご家族の意向と希望を丁寧に汲み取ることが何より大事[/btp_line]です。コミュニケーション力は必須ですが、口下手だからとあきらめる必要はないと思います。口下手であっても、それを否定せず、自分の持ち味として肯定してみてください。うまくしゃべれなくても、人に対する「誠実さ」を出していければ、きっと相手にも伝わるはずです。

    自分の性格や得意な分野をうまく生かして、自分のできることを一生懸命していくと、利用者さんやご家族にもきっと通じます。それでもうまくいかないときは、振り返って反省しつつ、「次はこうしてみよう」と前向きに考えてみましょう。

    今はケアプランにも専門知識が必要です。看護師や介護福祉士、ヘルパーなどの「基礎職」を持つ方は、その知識と経験が必ずケアマネジャーの業務に役立ちます。既に基礎職の資格をお持ちの場合は、ぜひ仕事に生かしてほしいですね。

    仕事の中で壁にぶつかったときは、「人に頼る」ことも大切だと思います。自分1人でケアマネジメントしているわけではありません。[btp_line]ケアプランを円滑に進めるためには、他職種の方との連携が大切です[/btp_line]。一人で悩んだり抱え込んだりするのではなく「この問題はヘルパーさんに聞いてみよう」「リハビリのことは理学療法士さんに聞いてみよう」と、周囲にすぐ相談しましょう。1人ではなく、チーム全体で支えていくことが最善です。困ったとき助け合えるように、同じケアマネ仲間も大事にしてほしいと思います。

    ケアマネジャー・福間さんのインタビューを終えて

    デイサービスの現場から、ケアプランを作成する仕事へとステップアップした福間さん。誠実なお人柄から、いつも利用者さんやご家族と丁寧に向き合い、ケアに尽力されている様子が伝わってきました。介護の仕事には現場に立って介助するだけでなく、ケアマネジャーのように総合的な支援を行う職種もあります。責任が伴う仕事ですが、利用者さんが介護サービスを受けながら、その方らしく暮らす姿を見守っていけることもやりがいですね。介護の現場でステップアップしていきたい方は、ぜひケアマネジャーの資格も視野に入れてみてくださいね。

    【介護相談室かがやき】

    所在地広島市安佐南区祇園2-47-8
    電話番号082-209-6641
    公式サイトhttps://www.lsi-kk.co.jp/home-care-support/
  • 新人訪問看護師さんにインタビュー!利用者さんの暮らしに寄り添う看護の魅力とは?

    新人訪問看護師さんにインタビュー!利用者さんの暮らしに寄り添う看護の魅力とは?

    利用者さんの居宅を訪問し、医療ケアを含めたサービスを提供する[btp_line]訪問看護[/btp_line]。病気や障害があっても、慣れ親しんだ自宅で暮らしたい…そんな利用者さんの願いに寄り添うことができる仕事です。
    今回は病院勤務の看護師から、広島市にある「訪問看護ステーションかがやき」の訪問看護師に転身したお二人にインタビューしました。入職して1ヶ月弱、どのようなことを感じながら働いているのでしょうか。訪問看護師の仕事に興味のある方や転職を考えている方は、ぜひ参考にしてくださいね。

    ※インタビュー実施日:2022年7月

    [btp_box]今利萌(いまり・もえ)さんプロフィール
    看護師。病院(脳外科、整形外科)に6年間勤務したのち、2022年6月から「訪問看護ステーションかがやき」(広島市安佐南区)勤務。[/btp_box]

    [btp_box]和田佳奈子(わだ・かなこ)さんプロフィール
    看護師。病院(消化器内科、外科)に4年間勤務したのち、2022年6月から「訪問看護ステーションかがやき」(広島市安佐南区)勤務。[/btp_box]

    訪問看護師になった、きっかけや経緯は?

    和田さん:以前は、急性期の病棟で勤務していました。つぎつぎと患者さんが救急車で搬送され、24時間帰宅できないこともあり…かなりハードな職場でした。次第に「もっと、患者さん一人ひとりと時間をかけて関われる仕事がしたい!」と思うようになり、訪問看護師に転職しました。

    今利さん:私も以前は急性期の病院で看護師をしていました。訪問看護に転職したのは、結婚を機に夜勤に入れなくなったことがきっかけです。訪問看護は経験したことがない仕事だったので不安でしたが、教育体制が整っていたことが今の勤務先を選ぶ決め手になりました。慣れるまで先輩スタッフさんに同行させてもらえるなど、手厚いサポートもあったので、とても良かったです。和田さんのような、なんでも相談できる同期スタッフがいるのも心強く思っています。(笑)

    訪問看護の実際の仕事内容は?

    和田さん:利用者さん宅を訪問したら、必要に応じてバイタル(脈拍など)をとったり、点滴をしたり、入浴介助をしたりして、会話をしながら体調をチェックします。所要時間は1件につき、30分~1時間くらいですね。
    訪問の頻度は、利用者さんの状態によって、毎日の方もいれば、週一、月一の方もいます。ご本人やご家族の方とお話ししながら、「前回と変わっているところはないか?寝起きはできているか?布団はたためるか?お部屋の衛生状態は?」など、いろんなことを観察して、iPadに細かく記録します。これは、利用者さんの状態と生活環境を、医師やケアマネジャーなど他職種の方と共有するためです。

    iPadの記録画面

    今利さん:私は、訪問看護の仕事は“看護の応用編”だと思っています。病棟なら医師に相談することができますが、訪問看護は利用者さんのご自宅に一人で伺うので、自分だけで判断しないといけない場面が結構あるんです。どんなことが起きても対応できるように、必要な器具は一式持っていきますし、応用力や対応力が試される仕事だと思います。

    お二人がふだん持ち歩いている愛用の器具

    今利さん:また、病院では「治療」が目的ですが、訪問看護は「現状維持」と「療養」が目的なので、自然と患者さんの「生活を支える」という役割になります。ふだんどんな環境で生活されているのか?療養しているのはベッドなのか布団なのか?ご家族の介護負担はどのくらいか?など、その方の暮らしをしっかり観察する必要があります。

    また、一人の利用者さんを、複数のスタッフで担当するのも、訪問看護の特徴だと思います。一人の目では見落とすこともあるし、慣れてくると逆に見えなくなることも多いんです。利用者さんを複数の目で見て情報を共有することで、見落としや医療ミスを防ぐ目的もあります。

    訪問看護の仕事のやりがいとは?

    今利さん:病棟看護師としての経験しかなかったので、訪問看護師という仕事を始めたときは、環境や考え方の違いに戸惑いました。でも今は、利用者さん一人ひとりに寄り添った看護を提供できて、とてもやりがいを感じています。
    特にうれしいのは、ご本人やご家族との信頼関係ができて、いろんな相談をしてもらえる時ですね。あるとき、病気のため急に介助が必要になった利用者さんがいらっしゃいました。急なことで、ご家族は介助の方法が分からず不安に思われていたため、「食事の時はこうすると嚥下しやすくなりますよ」など、アドバイスしたらとても喜んでいただけました。

    和田さん:やりがいを感じるのは、やはり利用者さんの暮らしに1:1でじっくり関われることですね。病院だと起床~消灯まで時間や規則が決まっていますが、訪問看護は基本的に訪問先の生活リズム、生活習慣に従います。また、そのご家族ならではのやり方があったりするので、「正しいやり方」というのはありません。なので、訪問看護は臨機応変に対応することが求められる仕事だなと実感しています。
    訪問先のご家族やご本人から「来てくれてうれしい」「いつもありがとう」って声をかけていただくことがあって、そういう時はすごくうれしいですね。訪問看護は、利用者さんと密に話をすることができるので、その方が何に困っていて、療養中どのようなことが不安なのかをしっかり聞くことができるため、とても素敵な仕事だなと思います。

    これからの目標や取り組みたいことは?

    今利さん:訪問先でどんなことがあっても、どんな相談を受けても、対応できるように経験を積みたいです。
    同じ事業所(訪問看護ステーションかがやき)内に、憧れの先輩スタッフさんがいるんです。いつも元気でニコニコされていて、利用者さんからもご家族からも信頼されています。いつかその方のように、私が訪問することで安心感を与えられるような看護師になりたいです。

    和田さん:利用者さんに「来てくれてうれしい」と思っていただけるような看護を提供することを目標にしています。そのためには、必要な医療の知識も身に付けていきたいです。利用者さんの状態を分析するには、医療の知識が欠かせませんから。

    これから訪問看護の仕事を目指している方や、興味を持っている方へのメッセージ

    今利さん:訪問看護は、仕事を通して自分自身も成長することができ、やりがいも感じることができる仕事です。利用者さん一人ひとりを看る力だけでなく、視野も広がります。特にコロナ禍の今、病院は面会制限があるため、自宅療養を希望する方が増えています。在宅なら慣れ親しんだ環境で過ごすことが可能です。なので、訪問看護のニーズは今後も増えていくと思います。

    和田さん:訪問看護師として利用者さん宅に伺うようになって、「こんな人になりたいな」「こんな家族って素敵だな」と思う機会が増えました。訪問看護は大変な仕事だと思われがちですが、その人の生活を支えることができ、たくさん感謝されることもあるので、とてもやりがいのある仕事だと思います。

    新人訪問看護師さんのインタビューを終えて

    病棟看護師から、訪問看護師へと転職されたお二人のリアルな声はいかがでしたか?新しい環境に飛び込んで、やりがいや学びを得ながら働いていることを楽しそうに語る、お二人の姿が印象的でした。訪問看護は、これまでに培った看護経験を活かしながら挑戦できる仕事です。訪問看護師への転職を考えている方は、ぜひ参考にしてくださいね。

    【訪問看護ステーションかがやき】

    所在地広島市安佐南区祇園2-47-8
    電話番号082-875-6752
    対応エリア広島市(中区、東区、西区、安佐北区、安佐南区)
    公式サイトhttps://www.lsi-kk.co.jp/

    ★2022年9月1日、広島市南区仁保新町に「訪問看護ステーションかがやき南」オープン!

  • デイサービスの仕事の魅力と求められる人材とは?広島の通所介護運営者にインタビュー

    デイサービスの仕事の魅力と求められる人材とは?広島の通所介護運営者にインタビュー

    近年、ユニークなコンセプトを持つデイサービスが増えてきました。広島市安佐南区・西区に開所した[btp_line]デイサービス「ゆめか大町」「ゆめか古江」[/btp_line]は、「昔やってきたことで活躍するデイ」がコンセプト。また同じく2021年に開所した[btp_line]「フィットネスデイ Yスタ西原」[/btp_line]は、「明日の動ける体は今日から」をコンセプトにしています。今回は広島市安佐南区と西区で、ユニークな通所介護(デイサービス)を運営する、株式会社KD.SEVEN代表の桒原芳崇さんにお話を聞きました。介護職に就くまでは保育の仕事に携わっていた桒原さんが、介護業界に転職した理由や、仕事のやりがい、経営者として求める人物像などを語っていただきました。

    プロフィール
    [btp_box]

    桒原芳崇さん
    保育関係の仕事を経て、2014年11月に通所介護「ゆめか川内」を開所。現在、広島市安佐南区大町・西原、西区古江の3か所に地域密着型通所介護「ゆめか大町」、通所介護フィットネスデイ「Yスタ西原」(ゆめか川内から移転・改称)、通所介護「ゆめか古江」を運営。[/btp_box]

    今回、桒原さんのインタビューを行ったデイサービス「ゆめか古江」(広島市西区)は、約40人の方が利用しています。日常的な活動とマシントレーニングを取り入れているのが特徴で、利用者さんに料理や掃除などの「家事」を手伝ってもらったり、専用マシンで楽しみながら運動能力や脳機能を向上させたりすることを重視しています。

    [btp_box]※通所介護(デイサービス)とは?
    介護が必要な方に向けて、居宅生活を続けられるように残存能力に応じた支援を行うサービスです。食事や入浴などの介助、機能訓練などを日帰りで行います。通所介護(デイサービス)は孤独感の解消や、利用者さんのご家族の身体的・精神的な負担軽減を図ることに役立っています。[/btp_box]

    関連記事:

    介護の仕事を始めたきっかけは?

    広島市内の通所介護では珍しい運動器具を導入

    (桒原さん)もともと保育について学べる専門学校に通っていたので、卒業後は個人運営の無認可保育所で働いていました。介護の仕事を意識するようになったきっかけは、祖母が脳梗塞で倒れたことです。祖母は遠方に住んでいたので、私が介護をする機会はありませんでしたが、祖母の出来事を機に、介護の仕事に興味を持つようになりました。
    ちょうどそんな折に、知り合いから「デイサービスの仕事をしないか」と声をかけられたのです。

    (介護の仕事は未経験ながらも、専門学校の授業の一環で介護実習に行っていた経験がある桒原さん。転職を考えていたことや、実習での経験も後押しして、介護の道へ進むことに。)

    (桒原さん)当初は資格を持っていなかったので、働きながらヘルパー2級(現在の介護職員初任者研修)、介護福祉士、ケアマネジャーの資格を取得しました。さまざまな利用者さんやご家族、スタッフの思いを聞くうちに、「昔やっていたことで活躍できる環境を作り、さまざまな高齢者の方が通えるデイサービスを作りたい」と思い、通所介護(デイサービス)を運営する株式会社KD.SEVENを立ち上げました。

    介護の仕事をする中で、難しかったことは?

    脳刺激と反射・注意力を鍛えるためのトレーニング

    (桒原さん)仕事で大変さを感じるのは、利用者さんの思いと、ご家族の思いが一致しないときです。たとえば、利用者さんは「自分の体力を考えてデイサービスではゆっくり過ごしたい」と思っているけれど、ご家族は「しっかり運動して動けるようになってほしい」と思っているときなどです。
    どちらの思いもよく分かるので、両者の納得がいくように調整するのは簡単ではありません。そんなときは、[btp_line]利用者さんとご家族の思いを丁寧に聞くことを心がけています[/btp_line]。本音をうまく打ち明けらない利用者さんもいるので、ふとしたときにこぼした本音を見逃さないようにしています。

    介護の仕事をされる中でうれしかったこと、やりがいを感じることは?

    (桒原さん)やはり、利用者さんの変化を実感できたときです。「トイレまで歩いて行けるようになった」「立って洗濯物が干せるようになった」のような声を聞くと、とてもうれしく思います。また精神的に不安定な方がデイサービスに通い、落ち着きを取り戻すことも。穏やかな姿を見られたときも、やってよかったと感じますね。

    印象に残っている利用者さんの中に、90代の方で「ゲームセンターの『太鼓の達人』(リズムに合わせて太鼓を叩くゲーム)がやってみたい」とおっしゃった方がいます。そこでデイ以外の日に食事会を企画し、その帰りにゲームセンターへ寄れるように計画しました。念願のゲームで遊べたときのとてもうれしそうな顔を見て、自分もうれしかったのを覚えています。デイサービスでは一見難しそうなことでも、利用者さんが「やりたい」と思ったことを叶えられるようにしていきたいですね。

    介護の仕事をされる中で大切にしていることは?

    (桒原さん)[btp_line]お互いが「ありがとう」と言い合える関係を大切に[/btp_line]していきたいです。そのために、「ゆめか古江」では利用者さんに食器洗いや洗濯・掃除などを手伝ってもらっています。ゲームやレクリエーションもいいですが、昔から馴染みのある家事をする方が落ち着く方もいますからね。

    また、[btp_line]何歳であってもやりたいことを叶えてあげられるような支援[/btp_line]も心がけています。私が運営している「フィットネスデイ Yスタ西原」(広島市安佐南区)は、運動機能訓練に特化したデイサービスです。柔道整復師やスポーツトレーナーを配置し、さまざまなトレーニングを行える施設にしました。最初、当施設を作ったときは「高齢者の方には難しいのでは?」と心配されました。でも、当施設に通う方の多くはトレーニングを通してスタッフや利用者さん同士の交流を楽しんでいます。中には、脳卒中が原因で身体の自由が利きにくいけれど「また車を運転できるようになりたい」と目的を持って通う方もいるほどです。

    何歳でも、どんな状態でも、やりたいことができるような支援、施設づくりに力を入れていきたいですね。

    これからの目標や取り組みたいことは?

    (桒原さん)今後は認知症対応型生活介護(グループホーム)を開設できればと思っています。今の施設では、認知症の進行が進むと利用できなくなる方もいるからです。他の施設へ移るとなると、スタッフも利用者さんも変わりますから、どんなに素晴らしい場所でも不安になりますよね。
    うれしいことに、利用者さんやそのご家族から「KD.SEVENの認知症対応型生活介護(グループホーム)があれば」と言われることがあります。もし認知症対応型生活介護(グループホーム)が開設できれば、[btp_line]同じ理念のもとで長期的な支援ができるのが魅力[/btp_line]ですね。

    介護のお仕事を目指している方や興味がある方へのメッセージ

    調理を手伝う利用者さん

    (桒原さん)周りの方から「介護の仕事は大変でしょう」とよく言われることがあります。たしかに大変なことはありますが、[btp_line]それ以上のやりがいがあると実感[/btp_line]しています。私が特に魅力を感じるのは、利用者さんの人生に触れられるときです。利用者さんに出会うたび、その方が歩んできた人生を知ることができます。これまで出会った利用者さんの数を合わせると何十年、何千年分の長い歴史です。戦争の体験や仕事の体験など、自分の人生にはない出来事が聞けて、自分の人生観が深まっていくのを感じます

    経営者として現場に求める人材は、明るくて、やる気のある方です。介護職は人と接する仕事ですから、気持ちのよい方がいいですよね。あとは周りへの感謝ができているかどうか。それを確かめるために、私は面接でよく「ツイていますか?(あなたは運がいいですか?)」と聞くようにしています。これはパナソニック創業者である松下幸之助さんの言葉です。[btp_line]「自分はツイている」と自覚があるのは「周りに助けてもらった」という意識がある方[/btp_line]だと思います。つまり、周りに対して感謝の気持ちが持てているという証拠です。反対に、「自分はツイていない」と思っている方は、周りに十分目を配れていない可能性があります。周りに目を配れるかどうかも、採用を決めるときのポイントです。

    介護施設経営者である桒原さんのインタビューを終えて

    終始穏やかな雰囲気でインタビューに応じてくださった桒原さん。利用者さんに常に優しく寄り添う姿が印象的でした。どんな仕事にも大変な部分はありますが、[btp_line]「多くの人生に触れられる」のは、介護職ならではの魅力[/btp_line]ですよね。この記事を読んで介護の仕事に興味が湧いた方は、ぜひ介護の仕事について調べてみてはいかがでしょうか?

    【ゆめか古江(通所介護)】

    所在地広島県広島市西区古江東町5-26
    電話番号082-507-5515
    公式サイトhttps://www.kd-seven.com/
  • これからの福祉に求められている人材って?福祉施設経営者に聞きました!

    これからの福祉に求められている人材って?福祉施設経営者に聞きました!

    介護職に携わる人の中には、介護と密接なつながりのある「福祉」の現場に興味がある方も多いのではないでしょうか?今回は広島市安佐北区を中心に放課後等デイサービスや就労継続支援事業所を運営する石田雅也さんにインタビューしました!未経験で飛び込んだ福祉の仕事の大変さやややりがい、経営者として求める人材像などを語っていただいています。福祉の仕事に興味がある人はぜひ読んでみてくださいね。

    プロフィール

    [btp_box]石田雅也さん
    大型トラックの運転手、不動産経営などを経て、2013年1月に株式会社アイオライトを設立し、同年5月に「まごころの家倉掛」を開所。現在、安佐北区3か所、南区1か所に放課後等デイサービス、安佐北区と東区の2か所で就労継続支援B型、安佐北区で生活介護、放課後等デイサービス機能を持つ「まごころの家 高陽」に短期入所(ショートステイ)を運営。[/btp_box]

    まごころの家倉掛

    「まごころの家」では、放課後等デイサービスや就労継続支援B型、生活介護、短期入所(ショートステイ)といった福祉・介護サービスを提供しています。障害のある方への就労支援から始まり、現在では介護を要する重度障害の方へのサポートにも尽力している施設です。

    ※放課後等デイサービスとは?
    障害のある小・中・高校生が放課後や長期休暇中も利用できるサービス。学校や家庭以外に居場所を作り、活動を通して自立を目指していきます。2012年に制度が始まって以来、現在も利用者数の数は増え続けており、今後も高い需要が見込まれる取り組みです。

    ※就労継続支援とは?
    障害や病気が原因で一般の企業や事業所などでの就労が難しい方のために、働く場所の提供や仕事に必要な訓練を実施する福祉サービス。雇用契約を結ぶ「就労継続支援A型」、雇用契約を結ばない「就労継続支援B型」の2種類があります。

    福祉の仕事を始めたきっかけは?

    (石田さん)福祉の仕事を始めたきっかけは、親類に障害のある子供がいたことです。当時の私は障害の知識が全くなかったので、育児の様子を見て漠然と「大変そうだな」と思っていたのを覚えています。ですが、一生懸命子供と向き合う親類の様子を見るうちに「障害のある子供たちの役に立ちたい。保護者の方が楽になれる場所があれば」と考えるようになったのです。
    そんな折に民間事業者でも放課後等デイサービス事業に参入できるようになったのを受け、2013年に放課後等デイサービス「まごころの家 倉掛」をスタートしました。当初は私を含む福祉未経験の役員2名と、介護や保育の有資格者のスタッフ3名で計5名。運営の仕方に戸惑うことも多く、模索する日々が続きました。

    福祉の仕事をする中で、難しかったことは?

    (石田さん)「まごころの家 倉掛」を開所してすぐ、重度の発達障害のある女の子がやってきました。障害が重かったためか他のデイサービスでは断られ、開所したばかりの当施設を頼ってきたそうです。知らない場所への拒否反応からか初日は玄関から入ることができず、窓から部屋に入るほどでした。言葉がしゃべれずうまく思いを伝えられないので、物を投げたり叫んだりして戸惑いを表現していたようです。その女の子との出会いをきっかけに、障害について勉強し、障害のある子供への関わり方を考え直しました。最初こそ大変なスタートでしたが、今となっては初めての利用者があの女の子でよかったと思っています。

    福祉の仕事をされる中でうれしかったこと、やりがいを感じることは?

    2階の就労継続支援フロアの様子

    (石田さん)先ほど紹介した女の子との交流は4年間続き、関わり方を工夫して根気よく接していくうちに、徐々に信頼関係が生まれました。女の子の純粋な人間味に触れ、心が洗われていくようだったのをよく覚えています。福祉の仕事はスタッフが利用者さんを助けているように見えますが、実は利用者さんの笑顔に救われることの方が多いです。

    現在の利用者さんの多くは、以前利用していた方のご家族や知り合いの方です。家族や知り合いに勧めたいと思っていただけるほど信頼を寄せてもらえたことも、なによりうれしいですね。いろんな評価がある中で、知人の口コミほど信頼できるものはなかなか他にありませんから。

    これからの目標や取り組みたいことは?

    スタッフのみなさん。右から2番目が石田さん

    (石田さん)福祉のみならず介護の分野でも多くの人の役に立てるように、いろいろなことを考えています。

    まず1つ目は「まごころの家 倉掛」の活用です。2022年2月から1階は生活介護事業サービス、2階は放課後等デイサービス、3階は就労支援サービスを行っています。ただ、まだ空き部屋が残っているので、障害のある子供や大人の自立・就職につながるような場所を作りたいと思っています。

    2つ目は新しいビジネスの構築です。福祉業界では「農福連携」といって障害のある方や高齢者の方が農業に取り組むことがよくあります。ただ農作物を作っても、販売ルートが整っていなければ安定的な収入になりません。そもそも農作物ですから決まった数ができるとも言えませんしね。だからこそ、いろいろな方法を模索しながら、障害のある方の仕事につながる取り組みを実現していきたいです。

    そして今後、特に大切な取り組みになってくるのが、後進の育成です。私自身が新しい考えを取り入れていくのはもちろん、これまでの経験やノウハウを若い世代に伝えていきたいです。少しでも多くの人の役に立つために次の世代を育てていくことが、私の使命だと思っています。

    福祉のお仕事を目指している方や興味がある方へのメッセージ

    (石田さん)今、福祉の現場では、専門的な知識・根拠に基づいた支援ができる人が求められています。そのために看護師の資格や福祉・医療の専門資格を持った人がいてくれるとありがたいです。あとはやる気のある人がいてくれるといいですね。

    [btp_line]福祉の仕事はチームワークが大切[/btp_line]なので、最低限のコミュニケーション能力は欠かせません。困ったときは「手伝ってほしい」と言える、手伝ってもらったら「ありがとう」と感謝できる、誰かが困っているときは「手伝いましょう」と言えるなど、当たり前のコミュニケーションがとれることが大前提だと思っています。

    またどんな業界でも、目標を持つことは大切です。介護・福祉の業界を5年経験すれば、いろいろな資格にチャレンジできるようになります。頑張りたい気持ちがあるのなら、毎日ただ漫然と働くのではなく、[btp_line]「1、2年後にはこうなりたい」と目標を持ってほしいです。[/btp_line]理想のキャリアプランや目標を達成するために、小さなことでもいいからチャレンジを続けていくのをおすすめします。スタッフの気持ちは利用者さんも見抜いていますから、いい加減な気持ちで働いているとすぐに伝わってしまいますしね。

    福祉施設経営者である石田さんのインタビューを終えて

    広島市で複数の放課後等デイサービスや短期入所(デイサービス)などを運営する経営者さんの声をお届けしました。福祉には利用者さんの居場所づくりや就労支援ができる仕事があり、年齢や障害の程度に応じた支援ができるのが魅力です。そんな福祉の現場では、知識に基づいた支援やコミュニケーション能力が求められています。福祉・介護の仕事に興味を持った方は、求められている力を意識しながら、一歩踏み出してみませんか?

    【まごころの家 倉掛】

    所在地広島県広島市安佐北区深川4丁目20-24
    電話番号082-516-5669
    公式サイトhttps://magokoro-hiroshima.com
  • 新人介護職スタッフさんにインタビュー!現場のリアルな声をご紹介

    新人介護職スタッフさんにインタビュー!現場のリアルな声をご紹介

    介護職って大変そう。そんなイメージを漠然と持っていませんか?介護の仕事に興味はあるけど、私にできるかな…?キツい仕事なのかな…?と、気になる点は多いかと思います。

    そこで今回は、広島市安佐南区のサービス付き高齢者向け住宅「Sグラン安佐南」で働く、新人介護スタッフさんのリアルな声をインタビューしてみました。介護未経験で入職して1か月弱、実際どのように感じながら働いているのでしょうか。仕事の面白さ、先輩スタッフとの関係性なども質問してみたので、就職・転職活動の参考にしてくださいね。

    プロフィール
    [btp_box]桑木里穂さん
    アパレル職やテレフォンアポインター、営業職などの経歴を持つ、一児のママ。2022年4月から、広島市のサービス付き高齢者向け住宅「Sグラン安佐南」に介護スタッフとして入職。[/btp_box]

    2022年4月から、サービス付き高齢者向け住宅で働き始めた桑木さん。介護の仕事は全くの未経験でスタートされました。では、なぜ桑木さんは介護スタッフを目指したのか、詳しくご紹介していきましょう。

    介護スタッフの仕事に興味を持ったきっかけは?

    体操指導を行っている桑木さん(右端)

    (桑木さん)資格を取得して一生働ける仕事をしたい!その思いで介護職を選びました。今の職場は働きながら資格を取得できるよう、費用も含めサポートしてもらえるのでとても感謝しています。4月に入職して1か月あまりですが、先日、介護職員初任者研修を修了しました!運転免許以外で初めて手にした資格なのでとても嬉しいです。

    今の仕事に就くまでの経緯とエピソード

    (桑木さん)介護施設に関してほぼ知識がなく、人づてに今の職場を紹介してもらったことがきっかけです。面接時に、資格がないこと、子供がいるので日曜と祝日は働けないこと、保育所のお迎えがあるのでこの時間までしか働けないという条件を伝えたうえで、今お仕事をしています。面接に来るまで、サービス付き高齢者向け住宅がどのような雰囲気なのか分かっていませんでしたが、職場はとても明るく、アットホームで清潔感のある施設で驚きました。今はここに入職できてラッキー!と思っています。

    実際に介護の仕事をしてみての感想

    (桑木さん)職場の方針で、介護職員初任者研修を修了しないと本格的な介護サービス(おむつ交換や入浴介助など)を提供してはいけない決まりになっています。私は数日前に研修を修了したばかりなので、来週から入居者さんの日常生活をサポートする本格的な介護に携わる予定です。入居者さんの生活を直接サポートできるので、楽しみですが緊張もしています。

    未経験で介護職に飛び込んでみての感想は?

    (桑木さん)「育児」という経験をしていたことがすごく役立っているなと思っています。介護って一般的には敬遠されるような場面も多いじゃないですか。だけど、子どもを通じて体験したことが、高齢者の介護でも同じだなと感じることが多くあります。大人と子供は違うとか言いますけど、私は全く抵抗なかったです。

    やりがいや面白さを感じる場面は?

    (桑木さん)まだこのお仕事を始めたばかりですが、面白さはあります!高齢の方との会話は、予想外なことが多いのでとても楽しいです。中には同じ話題を繰り返す方もいらっしゃいますが、聞いていて苦になりません。むしろお話のタネが尽きないので、ずっとお喋りできて楽しいです。

    仕事をするうえで困ったことは?

    (桑木さん)最初は利用者さんが何をおっしゃっているのか聞き取れなくて困った…ということもありましたが、話の流れや相手の表情など注意深く聞いていたら、すぐ分かるようになりました。今は全部教えてもらっている段階なので困ることはないですが、早くいろんなことができるように、経験を積んでいきたいと思っています。

    友達にも「介護の仕事って大変そうだよね」と言われるんですが、先輩スタッフさんもみんな優しいですし、子育てしながら働くことに理解ある方たちばかりなので、大変さを感じることなく働けています。「意地悪な先輩とかおらんかった?」って聞かれることもありますけど、本当にいません!(笑)一緒に働くスタッフさんは、お子さんがいる方も多いので、子育てのことも色々と理解してもらっているうえで働けているなと実感しています。

    仕事と育児との両立はできますか?

    (桑木さん)完全週休2日制なので、子供を保育園に預けることができない日曜日と祝日を除いて出勤しています。祝日がない週は、土日休み。祝日がある週は土曜日に振替出勤をしています。朝は、7時に家を出て保育園に子供を預けて、8時前には職場に着いています。そこから17時半まで働いて、子供を迎えに行くというのが出勤日の流れですね。条件に沿った勤務形態なので、育児と仕事の両立ができています。

    これからの目標や取り組みたいことは?

    (桑木さん)先輩スタッフさんもお忙しいので、早く介護スタッフの一人としてカウントされる働きができるようになりたいです。「今の着替えのお手伝い何点でした?」と利用者さんに点数をつけてもらうことも(笑)。未熟な部分もありますが、それをコミュニケーションのきっかけにして、楽しく仕事しています。一人前とまでは言わないですが、それに近いところまでスキルアップすることが目標です。

    介護の仕事を目指している人へのメッセージ

    (桑木さん)異業種から転職してみて、[btp_line]介護は「人間力」がすごく養われる仕事[/btp_line]だと思います。私はまだ1か月弱の経歴ですが、この仕事を好きだなと感じている部分でもあります。利用者さんに対する声かけひとつに考えさせられる場面が多くあるので、そこが面白さであり、介護の深い部分だと思います。

    飽き性な私も、日常生活では味わえない体験が毎日できるので、すごく楽しいですよ。まだまだ未熟な私が一緒に頑張りましょうと言うのもおこがましいですが、介護の仕事に少しでも興味のある方は、ぜひ挑戦してみて欲しいです。

    新人介護スタッフさんのインタビューを終えて

    入職して1か月弱の介護スタッフさんのリアルな声はいかがでしたか?未経験でも、とても生き生きと明るくお仕事に取り組んでいる印象が強く残ったインタビューでした。桑木さんが入職された施設のように、資格取得支援や業務のサポート体制が整っていれば、段階を踏みながらスキルアップできるので安心ですね。たとえ未経験でも、桑木さんのように「人が好き」であれば、介護のお仕事にも前向きに取り組むことができるかもしれません。人と関わるお仕事である介護職に興味のある方は、ぜひトライしてみてはいかがでしょうか。